【サル山のボス】ライカ北紀行 —函館— 第10回

西野 鷹志 【Profile】

函館弁で“なまら、あずましい”とは、“とても気持ちがよい”の意だが、そんな声が聞こえてきそうだ。サル山温泉は、なんと源泉かけ流し。長く入りすぎてボーとした顔の猿もいる。

吹雪のなかの天国
吹雪のなかの天国

およそ90頭の猿が暮らし、力がつよく思いやりがあり、人望ならぬ猿望があるのが、サル山のボスとなる。歴代ボスのなかで「函助」は、えばり散らさず、仲間の信頼をきずき、25年にわたって君臨した。人間でいえば100歳で大往生した日、サル山は静まり返っていたという。今のところ、つぎのボスは不在の模様だ。群雄割拠か、否、エサが充分にあるから争いもすくないとか。サル山の生命力が気になる。

どこかの国の偉いさんが、「こんな人たち」と街頭で声をあげたことがあったが、「こんな猿たち」と叫んだらサル山のボスにはなれないだろう。

●道案内 

函館市熱帯植物園 市電「湯の川」下車 徒歩15分(地図
※サルの温泉入浴 例年12月1日~翌年5月6日

いい湯だな(2016)
いい湯だな(2016)

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    西野 鷹志NISHINO Takashi経歴・執筆一覧を見る

    1941年東京生まれ。エッセイスト・写真家。函館中部高校を経て慶応義塾大学経済学部卒。30代半ばで郷里に戻り、函館山ロープウェイを経営する傍ら、日本初のコミュニティFM放送「FMいるか」を創設。北海道教育委員や女子高の理事長、函館のタウン誌「街」の発行人もつとめるなどその活躍は多彩。愛用のカメラ、ライカを肩に北の港街をモノクロで撮り続けて30年。『ウイスキー・ボンボン』『風のcafé 函館の時間』など多くの著書がある。

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