福岡「宗像大社」:貴重な文化財を多数所有する海の神社
Guideto Japan
・沖津宮のある沖ノ島は「海の正倉院」と呼ばれる
・2017年にユネスコの世界遺産に認定
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航海の安全を見守る神を祀る
宗像(むなかた)大社(福岡県宗像市)には、天照大御神(あまてらすおおみかみ)と素戔嗚尊(すさのおのみこと)がうけひ(占い)をした際に生まれた三女神が祀(まつ)られている。名前は、田心姫(たごりひめ)神、湍津姫(たぎつひめ)神、市杵島姫(いちきしまひめ)神で、宗像三女神あるいは宗像大神とも呼ばれる。
田心姫神は沖ノ島にある「沖津宮(おきつみや)」に、湍津姫神は大島にある「中津宮(なかつみや)」に、市杵島姫神は九州本土の田島にある「辺津宮(へつみや)」にそれぞれ祀られている。この三宮を総称して「宗像大社」と言う。
玄界灘に面する宗像の地は、中国大陸や朝鮮半島に近く、外国からの渡来品や進んだ文化を受け入れる窓口として重要な役割を果たしてきた。「日本書紀」には、歴代天皇のまつりごとを助けるために三柱の女神がこの地に降臨されたことが記されている。荒海で知られる玄界灘にあって、航海の安全を見守る神として信仰され、そこから「道」の守り神としても広く信仰されてきた。
国宝が多数発掘された沖ノ島
宗像大社の創建年代はつまびらかではないが、すでに「古事記」に記載が見られる。そのため、所有する文化財も数多く、神道考古学・美術史・宗教史上貴重な場所である。とりわけ沖津宮のある沖ノ島は沖合60キロメートルに浮かぶ断崖絶壁の孤島で、玄海灘の荒波に取り囲まれて人を寄せつけなかった。また古来より禁足の地とされて、学術調査をも拒んできた。
ようやく昭和29年になって発掘調査が開始されることとなったが、それまで1000年以上もの間隔離されていたため、調査結果は驚嘆すべきものであった。数回の発掘調査で発見された、古墳時代から平安初期の祭祀(さいし)遺跡や神宝は実に8万点以上に及んだ。その多くが国宝や重要文化財に指定され、沖ノ島は「海の正倉院」と呼ばれようになった。
この調査で改めて分かったことは、宗像大社では国家によって祭祀が行われていたということである。それほどに、日本と中国や朝鮮を結ぶこの海路は重要であったのであろう。沖ノ島の祭器類の最終年代が遣唐使の廃止時期と重なることも、それを示していると考えられる。
ユネスコは2017年に「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」を世界遺産に認定した。宗像大社を中心とするこの遺跡群は、4〜9世紀の日本と大陸との交流にまつわる貴重な文化遺産である。
●交通アクセス
宗像大社辺津宮:JR鹿児島本線「東郷駅」から、神湊波止場行きバス(宗像大社経由)で「宗像大社前」まで約 12分
宗像大社中津宮:JR鹿児島本線「東郷駅」から、福間行きバス(神湊経由)で「神湊波止場」まで約20分。市営渡船「しおかぜ」またはフェリー「おおしま」で大島港へ(乗船時間:しおかぜ約15分、おおしま約25分)
文:戸矢 学
写真:中野 晴生
(バナー写真=中津宮の拝殿)