長野「諏訪大社」:諏訪湖のほとりにある最古の神社

・勇壮な「御柱祭」で有名
・諏訪市、下諏訪町、茅野市にある4社で構成
・神道成立前からの古い信仰形態を残す

1万以上の分社を持つ日本最古の神社

長野県中央部の諏訪湖のほとりにある諏訪大社は、日本で最古の神社の一つに数えられる。「古事記」にも、国譲りの戦いに敗れて、出雲の国から諏訪まで逃れてきた建御名方神(たけみなかたのかみ)が祀(まつ)られたと記されている。

主祭神は建御名方神とその妃神である八坂刀売神(やさかとめのかみ)。諏訪大社を総本社として、日本全国には1万以上もの分社された諏訪神社があり、広く信仰されている。

諏訪大社の最大の特徴は、諏訪湖を挟んで北側の下社(しもしゃ、下諏訪町)の春宮(はるみや)と秋宮(あきみや)、南側の上社(かみしゃ)の本宮(ほんみや、諏訪市)と前宮(まえみや、茅野市)、計4社によって構成される珍しい祭祀(さいし)形態をとっていることだ。前宮を除く3社は弊拝殿のみで、ご神体を安置する本殿が存在しない。では、何を拝んでいるのかと言うと、本宮は守屋山、秋宮はイチイの木、春宮は杉の木をご神体とする。神道が成立する前からの古い信仰形態を残している。

上社前宮 本殿

上社本宮 弊拝殿

下社春宮 弊拝殿

下社秋宮 弊拝殿

7年に1度開催される「御柱祭」

八ヶ岳山麓には約5000年前に縄文文化が花開き、周辺ではいくつもの遺跡が発見されている。諏訪信仰には、神道が成立する以前の土俗信仰が共存していると言っていいだろう。前宮がある茅野市の「尖石(とがりいし)縄文考古館」では、国宝に指定されている2体の土偶「縄文のビーナス」「仮面の女神」の他、八ヶ岳山麓の遺跡から発見された多くの考古資料が展示されている。古代の精神文化の一端を垣間見ることができるので、諏訪大社と合わせて訪問することをおすすめしたい。

もう一つ、諏訪大社を全国に知らしめているのは「御柱(おんばしら)祭」と呼ばれる勇壮な祭りだ。正式には「式年造営御柱(みはしら)大祭」と呼ばれる。数えで7年目ごと(6年に1回)の寅(とら)年と申(さる)年に社殿の4隅に「御柱」と呼ばれる樹齢200年ほどのモミの木を立てる神事だ。直径約1メートル、長さ17メートル、重量1トンにもなる巨大なモミの木を16本も山から切り出し、急勾配の坂から引き落としたり、川を渡ったりしながら、上社は約20キロメートル、下社は約12キロメートルもの道のりを木やりに合わせて人力のみで運び、それぞれのお宮の四隅に建てる。巨大な柱は、まるで大地をうがつ楔(くさび)のよう。ただ、何のために御柱を立てるのかは、いまだに定説はない。

御柱祭の「木落とし」。氏子を乗せたまま急坂を駆け下る

4社にそれぞれ4本の御柱が立てられるが、全ての御柱を間近で拝することができるのは上社前宮のみで、それ以外の3社では一の柱と二の柱しか見ることができない(次の御柱祭は2022年虎年に行われる)。

●交通アクセス

諏訪大社 上社前宮:JR「茅野駅」からタクシーで約10分
     上社本宮:JR「茅野駅」からタクシーで約15分
     下社春宮:JR「下諏訪駅」から徒歩約20分
     下社秋宮:JR「下諏訪駅」から徒歩約10分

文:戸矢 学
写真:中野 晴生
(バナー写真=諏訪大社 下社秋宮 神楽殿)

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