ニッポンの桜

「哲学の道」の桜をくぐり抜け「熊野若王子神社」へ:京都・桜の名所巡り

琵琶湖疏水沿いの散策路「哲学の道」(京都市左京区)。春には約500本の桜が薄紅色のトンネルをつくる花見の名所を、その南端にある「熊野若王子神社」と共に紹介する。

疏水沿いの散策路に続く桜のトンネル

京都学派を代表する哲学者の西田幾多郎や田辺元(はじめ)らが、思索にふけりながら歩いたという「哲学の道」。春には、道沿いに咲くソメイヨシノなど約500本の桜がトンネルをつくり、花を見上げながら散策を楽しむ人でにぎわう。

疏水に架かる小さな石橋に桜の花がよく似合う
疏水に架かる小さな石橋に桜の花がよく似合う

哲学の道は、琵琶湖から京都市内に水を運ぶ琵琶湖疏水の分線に沿って、銀閣寺参道から熊野若王子(にゃくおうじ)神社辺りまで約2キロ続く。元々は疏水管理用の小道であったが、一般にも利用されるようになり、水辺の散歩道として親しまれるようになったという。この辺りは京都大学に近く、明治期から学者や文化人が多く暮らした地域だ。そのため、「文人の道」「思索の道」「哲学の小径(こみち)」などさまざまな呼び名が付けられ、疏水分線の保存運動が行われていた1969(昭和44)年、「哲学の道」に名称が統一された。現在は敷石の並ぶ散策路として整備され、「日本の道100選」にも選定されている。

1987年に敷石が並べられ、散策路として整備された
1987年に敷石が並べられ、散策路として整備された

桜並木は、近くに居を構えていた日本画家の橋本関雪(かんせつ)と夫人が、1922(大正11)年に桜の苗木を植樹したことから誕生した。そのため、桜並木を「関雪桜」と呼ぶ人もいる。散策の途中、疏水にいくつも架かる古い石橋で足を止めたくなるだろう。見上げれば両岸からせり出してくる薄紅の桜のトンネル、見下ろせば澄んだ流れに水草が揺れる光景は眼福としか言いようがない。

疏水に架かる小さな石橋に桜の花がよく似合う
疏水に架かる小さな石橋に桜の花がよく似合う

水面に映る桜も趣深い
水面に映る桜も趣深い

哲学の道が始まる熊野若王子神社

哲学の道の南側の起点となっている熊野若王子神社は、1160(永暦元)年に後白河法皇が紀州熊野権現を勧請して建立。室町第8代将軍の足利義政が花見の宴を開いたことで知られる桜の名所である。

境内に咲く桜も素晴らしいが、神社の東側の階段を上り、山道を少し歩くと桜花苑がある。そこに咲く「陽光(ようこう)桜」は、鮮やかなピンク色の花で春の名物となっている。

哲学の道の南側の起点近くにある熊野若王子神社
哲学の道の南側の起点近くにある熊野若王子神社

本殿の前に咲く桜。境内では、例年4月の第1日曜日には「桜花祭」が行われている
本殿の前に咲く桜。境内では、例年4月の第1日曜日には「桜花祭」が行われている

桜花苑の陽光桜は、濃いピンク色の花を咲かせる
桜花苑の陽光桜は、濃いピンク色の花を咲かせる

●アクセス
哲学の道・北の起点:京阪電鉄「出町柳」駅から京都バス 51号系統、市バス 17・102・203号系統に乗車して「銀閣寺道」下車 東へ徒歩5分。
哲学の道・南の起点:京阪電鉄「神宮丸太町」駅から市バス 93・204号系統に乗車して「東天王町」下車 徒歩5分

取材・文=藤井 和幸(96BOX)
写真=黒岩 正和、藤井 和幸(96BOX)
(バナー写真:美しい桜のトンネルが続いていく哲学の道)

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