ニッポンの桜

満開の桜で華やいだ熊本城:復旧進み、新しゃちほこが初の花見

防災

2016年の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城(熊本市中央区)。復旧工事はまだまだ続くが、4月上旬に桜が満開を迎え、城内が華やかに彩られた。18年4月末に設置された大天守の新しゃちほこは、桜との初共演となった。

桜の開花時期限定で規制区域も開放

1607年、「築城の名手」と呼ばれた戦国武将・加藤清正によって創建された熊本城。日本三名城の一つに数えられ、春には約800本の桜が咲く花見の名所として知られている。今年も3月下旬に開花した桜が、4月上旬に満開となり、熊本地震からの復旧工事が進む城内を春色に染めた。

城の玄関口にある桜名所「行幸(みゆき)坂」は、震災後、立ち入りが規制されているが、開花期間には一般開放日が設けられ、道沿いの桜並木が多くの花見客を出迎えた。二の丸広場では、家族連れがブルーシートを広げて弁当と桜を楽しむなど和やかな雰囲気に包まれた。

熊本市役所から眺めた熊本城公園
熊本市役所から眺めた熊本城公園

ソメイヨシノを中心に約800本の桜が満開となった
ソメイヨシノを中心に約800本の桜が満開となった

道沿いに65本のソメイヨシノが咲く行幸坂
道沿いに65本のソメイヨシノが咲く行幸坂

多くの花見客が熊本城を訪れた
多くの花見客が熊本城を訪れた

崩れた石垣前で美しく咲く桜
崩れた石垣前で桜が美しく咲く

親子三代の技で復活する天守閣のしゃちほこ

昨年の花見風景との大きな違いは、大天守を囲っていた足場の上部が撤去されたこと。ふき替えられた屋根の瓦としっくいの白さに、薄紅色の桜が美しく映える。そして、大天守の最上部には2体のしゃちほこが復活。2018年4月28日に震災から2年ぶりに設置されたが、桜の時季は終わっていただけに、新しゃちほこと桜の共演は今年が初となる。

大天守の新しゃちほこ。真新しい瓦としっくいを桜が彩る
大天守の新しゃちほこ。真新しい瓦としっくいを桜が彩る

2018年4月、クレーンで大天守に設置されるしゃちほこ(写真提供:熊本市)
2018年4月、クレーンで大天守に設置されるしゃちほこ(写真提供:熊本市)

約2年ぶりに大天守のシンボルが復活。製作費約2500万円は、日本財団が助成した(写真提供:熊本市)
約2年ぶりに大天守のシンボルが復活。製作費約2500万円は、日本財団が助成した(写真提供:熊本市)

このしゃちほこは、「藤本鬼瓦」(熊本県宇城市)の代表・藤本康祐さんが製作を担当。実は、震災で壊れた大天守と小天守のしゃちほこは、藤本さんの父・勝巳さんが07年の築城400年に合わせて製作したものだった。勝巳さんは、その3年後に他界。そのため「父と作った経験を生かし、復興のシンボルをぜひ自分の手で」と意気込んだという。小天守のしゃちほこは、東京からUターンで戻ってきた息子の修悟さんが製作を担当し、20年8月に設置予定だ。父から受け継いだ技を、さらに息子に伝えることで天守閣のしゃちほこを復活させる。

天守閣の一般公開は21年春、復旧完了は37年度末を予定して工事は進められている。作業はまだまだ続くが、新しゃちほこが天守閣の上から復興を見守ってくれるだろう。

2017年、しゃちほこ製作中の「藤本鬼瓦」の工房にて。右から藤本康祐さん、息子の修悟さん(写真:小田崎写真事務所)
2017年、しゃちほこ製作中の「藤本鬼瓦」の工房にて。右から藤本康祐さん、息子の修悟さん(写真:小田崎写真事務所)

窯入れ前のしゃちほこ(右手前)。中央は熊本市立熊本博物館から借り受けた、江戸時代製作といわれる熊本城のしゃちほこ(写真:小田崎写真事務所)
窯入れ前のしゃちほこ(右手前)。中央は熊本市立熊本博物館から借り受けた、江戸時代製作といわれる熊本城のしゃちほこ(写真:小田崎写真事務所)

現在、まだ足場に囲まれている小天守
現在、まだ足場に囲まれている小天守

工事中の石垣の向こうに見える大天守のしゃちほこと桜
工事中の石垣の向こうに見える大天守のしゃちほこと桜

●アクセス
「熊本駅」から市電で約10分「熊本城・市役所前」下車、徒歩すぐ

取材・文・写真=歌岡 泰宏(ポルト)
(バナー写真:熊本城大天守のしゃちほこを桜越しに望む)

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