廃線跡に色を添える桜並木「蹴上インクライン」:京都・桜の名所巡り
Guideto Japan
旅
舟運ルートで使用されていた傾斜鉄道の跡地を散策できる「蹴上(けあげ)インクライン」(京都市左京区)。春になると、郷愁を誘う廃線跡と華やかな桜が見事なコントラストを描く。
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舟運ルートで使用された線路跡地に咲く90本の桜
地下鉄東西線「蹴上(けあげ)」駅の近くから、仁王門通沿いに南禅寺前辺りまで続く「蹴上インクライン」。高低差約36メートル、長さ582メートルある世界最長の傾斜鉄道跡である。春には廃線路を歩きながら90本のソメイヨシノが楽しめるという、一風変わった桜の名所だ。3月下旬に花が咲き初め、4月上旬に見頃を迎える。
大津(滋賀県)から京都へ水を送るための琵琶湖疏水(そすい)は、かつて舟を使った輸送ルートとしても利用されていた。高低差が大きい蹴上地点では運航が困難なため、舟をレール上の台車に載せて斜面を運ぶ設備「インクライン」が、1890(明治23)年に造られた。琵琶湖疏水の舟運ルートは1948(昭和23)年に廃止されたが、後に三十石船を積んだ台車を復元して設置するなど整備され、現在は国の史跡に指定されている。
花見を楽しんだ後は、疎水の歴史を学ぶ
線路沿いの坂道には約90本のソメイヨシノが植樹され、春になるとレールの上に薄紅色のアーチを掛ける。インクラインへの入り口はいくつかあり、自由に出入りできるが、駅近くの蹴上船溜から散策するのがおすすめのコース。インクラインの頂上地点なので、ゆったりと下りながら南禅寺方面へと向かうことができる。線路脇を歩きながら、桜を眺めるという珍しい花見を体験した後は、終点となる南禅寺船溜にある琵琶湖疏水記念館や南禅寺境内にあるれんが造りの水道橋「水路閣」を訪れ、疏水の歴史を学んでみてはどうだろう。
●アクセス
京都市営地下鉄東西線「蹴上」駅から徒歩約2分
取材・文=藤井 和幸(96BOX)
写真=黒岩 正和、藤井 和幸(96BOX)
(バナー写真=トンネル下から眺める蹴上インクライン)