ニッポンの酒

知っていると100倍おいしい酒のABC(4)—味わいの特徴—

文化

目を閉じて日本酒の香りをじっくり確かめてみると、リンゴ、洋ナシ、ライチ、ハーブ、バニラ、穀物、木など実にさまざまだ。風土、気候、熟成の年月、仕込み方法などによって味わいが変化する。グレード表のキーワードと一緒に、味わいと香りを読み解いていく。

キーワードはうま味と香り

SAKEはどれも透明に近い色合いで、見た目は同じようだ。だが、1本ずつそれぞれ香りも味も実に個性豊か。ソムリエがワインをテイスティングするような気分で、SAKEも香りや味をじっくり確かめながら味わってみよう。

味わい

「うま味」は大切なキーワード。個々の酒でうま味の強弱はさまざまだ。そのほか、甘味、酸味、渋味、苦味が複雑に絡み合った味わいが日本酒の特徴。2つに大別すると、味が濃くて複雑な濃醇(じゅん)なタイプと、軽くて淡いタイプに分けられる。

香り

香りの種類は、リンゴ、洋梨、バナナ、ライチ、レモン、花、ハーブ、穀物、木、バニラなどさまざまだ。このほか、搾ってから3年以上を経て、 オレンジ色を帯び、ナッツやプラムのような香りの長期熟成酒もある。

ワインと同様、上立ち香と、含み香、アフターフレーバーも異なり、香りの強弱もいろいろある。ぐいっと飲んでしまわずに、鼻に近づけた時に立ち上がってくる香り、口に含んだときの香り、飲み込んだあとの余韻、この3つのポイントで香りを確かめてみよう。

舌触り

舌に乗せた時の感触にも差がある。さらさらとした滑らかなタイプや、ねっとりと粘性のあるタイプ、スパークリングワインのように発泡するタイプもある。微妙な差を確かめてみよう。

造り方の違いによる、おおまかな味と香りのイメージを表にしてみた。

  • 香りが華やかなのは、大吟醸酒、吟醸酒、純米大吟醸
  • 味わいが淡麗なのは、米を磨いた(米をたくさん削った)大吟醸酒や吟醸酒、本醸造酒
  • うま味が強いのは、純米酒

中でも伝統的な仕込み方法の「生酛(きもと)」(※1)「山廃(やまはい)」(※2)は、骨格のしっかりとした味わいになることが多い。

実際は個々の酒による差が大きい。あくまでもイメージを捉える目安と考えてほしい。

バナー写真:フランス料理と日本酒の店「MiwaMiya」(東京・阿佐ヶ谷)では、味わいの異なるお勧めの酒をそれぞれのうま味を引き出すグラスやぐいのみに注ぐ。

写真撮影=川本 聖哉
シリーズ題字=金澤 翔子(書家)

(※1) ^ 酒蔵に生息する乳酸菌を利用して乳酸菌を育てる、江戸時代に完成された手法で造った酒。

(※2) ^ 生酛と同じく乳酸菌を利用する方法だが、生酛で行う酛すり(山おろしともいう)を行わずに造る(山おろしを廃止するので、山廃という)。

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