100以上の国・地域から応募、「アジア最大級」に成長-東京国際映画祭
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東京国際映画祭(以下 TIFF)は1985年、日本初の大規模な映画の祭典として誕生した。日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の映画祭として2014年以降、釜山、香港、上海と各地の国際映画祭と協力提携し、アジアでの映画振興に取り組む体制を築いている。
初年度は40カ国・地域から519本だったコンペティション部門への応募作品は第31回(2018年)には109カ国・地域から1829本に上り、「アジア最大級の国際映画祭」へと成長した。第30回(2017年)までのグランプリ作品を受賞した地域は日本を含むアジア11、欧州18、中東3、米大陸5に分布している。当初アジア地域に偏っていた受賞作は欧州を中心に世界に広がっており、個別の国・地域で受賞が多いのは中国とフランスの各4作品、イスラエルの3作品。(国際共同制作の作品もあり地域別の総数は開催回数と一致しない。第8回は受賞なし、第10回は2本同時受賞だった)
第1回の開催時、区内に映画館16館がある“映画の街”渋谷でオープニングを飾ったのは黒澤明監督の『乱』。映画評論家・淀川長治氏が除幕式を行い作品140本が上映された。パレードが行われ、大通りに面した屋外ステージで連日イベントが催されるなど、「街は映画祭一色になった」(TIFF事務局)という。
当初隔年開催だったが91年の第4回からは毎年開催となった。第17回以降は六本木、新宿などにエリアを拡大し、『アマンダ』(ミカエル・アース監督)がグランプリを受賞した今年第31回は日比谷も新たに会場に加わった。
若手映画人の育成にも成果
上映作品や賞の面では、賞を争うコンペティション部門以外に日本の名作を特集する「ニッポン・シネマ・クラシック」、アジアを対象とした「シネマプリズム」など特集企画を拡大してきた。第17回(2004年)、世界の映画界に貢献した映画人に贈られる“黒澤明賞”が新設され、スティーヴン・スピルバーグ監督と山田洋次監督が受賞。また、第8回(1995年)にスタートした新人監督を対象とした助成プログラムでは今年カンヌ映画祭で最高賞を受賞した是枝裕和監督の作品が選ばれており、第24回(2011年)グランプリ作品「最強のふたり」はその後、フランス語映画として世界歴代1位の観客動員を記録するなど若手映画人の育成面で成果を挙げている。
一方、内外のコンテンツ・ビジネス関係者のためのマーケットTIFFCOM(ティフ・コム)を設立しアニメ、ゲーム、キャラクターなども対象としたコンテンツ取引を促進。17年、各国から371団体が出展、48カ国・地域からバイヤー1500人以上が訪れた。
年 | グランプリ受賞作品 | 国・地域別 |
---|---|---|
1985 | 『台風クラブ』(相米慎二監督) | 日本 |
1987 | 『古井戸』(呉天明監督) | 中国 |
1989 | 『ホワイト・ローズ』(ライコ・グルリチ監督)Flag of Yugoslavia (1946-1992).svg | ユーゴスラビア |
<ここまで隔年開催> | ||
1991 | 『希望の街』(ジョン・セイルズ監督) | 米国 |
1992 | 『ホワイト・バッジ』(鄭智泳監督) | 韓国 |
1993 | 『青い凧』(田壮壮監督) | 中国 |
1994 | 『息子の告発』(巌浩監督) | 中国 ・香港 |
1995 | 該当作品なし | なし |
1996 | 『コーリャ 愛のプラハ』(ヤン・スヴェラーク監督) | チェコ |
1997 | 『ビヨンド・サイレンス』(カロリーヌ・リンク監督) | ドイツ |
『パーフェクト サークル』(アデミル・ケノヴィッチ監督) | ボスニア・ヘルツェゴビナ | |
1998 | 『オープン・ユア・アイズ』(アレハンドロ・アメナバル監督) | スペイン |
1999 | 『ダークネス&ライト』(チャン・ツォーチ監督) | 台湾 |
2000 | 『アモーレス・ペロス』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督) | メキシコ |
2001 | 『スローガン』(ジェルジ・ジュヴァニ監督) | アルバニア |
2002 | 『ブロークン・ウィング』(ニル・ベルグマン監督) | イスラエル |
2003 | 『暖〜ヌアン』(霍建起監督) | 中国 |
2004 | 『ウィスキー』(フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール監督) | ウルグアイ |
2005 | 『雪に願うこと』(根岸吉太郎監督) | 日本 |
2006 | 『OSS 117 カイロ、スパイの巣窟』(ミシェル・アザナヴィシウス監督) | フランス |
2007 | 『迷子の警察音楽隊』(エラン・コリリン監督) | イスラエル |
2008 | 『トルパン』(セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督) | ポーランド 、ロシア、カザフスタン、スイス、ドイツ |
2009 | 『イースタン・プレイ』(カメン・カレフ監督) | ブルガリア |
2010 | 『僕の心の奥の文法』(ニル・ベルグマン監督) | イスラエル |
2011 | 『最強のふたり』(エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ監督) | フランス |
2012 | 『もうひとりの息子』(ロレーヌ・レヴィ監督) | フランス |
2013 | 『ウィ・アー・ザ・ベスト!』(ルーカス・ムーディソン監督) | スウェーデン |
2014 | 『神様なんかくそくらえ』(ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ監督) | 米国、フランス |
2015 | 『ニーゼ』(ホベルト・ベリネール監督) | ブラジル |
2016 | 『ブルーム・オヴ・イエスタディ』(クリス・クラウス監督) | ドイツ、 オーストリア |
2017 | 『グレイン』 Grain (セミフ・カプランオール監督) | トルコ |
2018 | 『アマンダ』(ミカエル・アース監督) | フランス |
バナー写真:第1回東京国際映画祭、黒沢明監督「乱」を上映する映画館=1985年6月、東京都渋谷区(時事)