上野のシャンシャン23年2月21日に返還へ : 日本で暮らしたパンダの系譜
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日本で生まれたパンダも中国に「返還」
上野動物園に初めてパンダがやってきたのは1972年10月。日中国交正常化を記念して、中国から日本に贈られた康康(カンカン♂)と蘭蘭(ランラン♀)は空前のパンダブームを巻き起こした。2頭が死んだ後、80年代初頭にやってきた歓歓(ホァンホァン♀)と飛飛(フェイフェイ♂)の間には86年に童童(トントン♀)、88年に悠悠(♂)が誕生した。
92年にやってきた陵陵(リンリン♂)は、メキシコの動物園と共同繁殖計画のため3度もメキシコに渡ったり、メキシコの動物園からパートナーとしてシュアンシュアン(♀)を借り受けたりしたものの、繁殖に成功しないまま2008年に死亡。その後、上野動物園は3年間パンダ不在だったが、2011年から力力(リーリー♂)と真真(シンシン♀)を中国から借り受けている。
2017年に2頭の間に香香(シャンシャン♀)が生まれ、上野動物園は再びパンダブームに沸いた。さらに2021年6月には双子の蕾蕾(レイレイ♀)と暁暁(シャオシャオ♂)が生まれ、22年1月から一般公開されている。
パンダは国際的な取引が禁止されており、中国から有料で借り受けている。日本で生まれた子パンダも同様で、中国との協定により生後24カ月で返還する取り決めとなっている。
香香は当初の返還予定である19年6月から交渉によって1年半延長して、20年末とされていた。その後、コロナ禍の影響でパンダの移送や飼育員の渡航が困難であることから、再延長を繰り返していたが、23年2月21日に中国に返還される。
パンダ界のビッグダディ
パンダ飼育の成功事例として世界的にも注目されているのは、和歌山県白浜町のテーマパーク「アドベンチャーワールド(AW)」だ。1992年生まれで、2歳の時に日本にやってきた永明(エイメイ♂)が2001年以降、ほぼ2年に1回のペースで繁殖に成功しており、2020年11月22日にもメスの赤ちゃんが生まれ、16頭目のパパとなった。(このうち11頭は中国に返還している)
永明と最初のパートナーとの間には子どもは生まれなかった。中国で人工受精を受けた上で、2000年にAWにやってきた梅梅(メイメイ♀)が同年に良浜(ラウヒン♀)を出産。その後、梅梅は永明との交配で4回妊娠して、6頭の子を残した。
永明は08年からは梅梅の娘・良浜(永明とは血のつながりはない)との間に子どもをもうけている。パンダの発情期は毎年3-5月のうちの2週間程度で、さらに、メスが妊娠可能なのは数日と言われており、自然交配での妊娠自体、極めて難しい。永明の繁殖能力の高さや、ペアの相性に加えて、ゆったりとした運動スペースがあり、のびのびと生活できる環境も影響していると考えられている。ちなみに、永明は現在28歳、人間で言えば80歳のおじいちゃんで、飼育されているパンダのオスの繁殖としては最高齢の記録だ。
震災復興支援にも一区切り
神戸市の王子動物園には、阪神大震災からの復興を支援する意味も込めて、2000年7月に興興(コウコウ♂)と旦旦(タンタン♀)がペアでやってきた。初代の興興は繁殖能力が無いとして中国に帰し、2代目興興を新たに借り受けた。旦旦は2回出産したものの、死産や生後間もなく死亡し、子宝には恵まれなかった。
当初の貸与期間は10年だったが、10年に2代目興興が死んだ後も、旦旦は協定を延長して神戸市民に親しまれてきた。しかし、中国側から「自然環境などが充実する場所で、余生を送らせたい」との意向が示され、返還が決まっている。
【オリジナルの記事は2018年10月30日公開、20年12月8日、11日に内容をアップデートして再公開した / アドベンチャーワールドは20年11月に生まれた赤ちゃんの性別を当初オスと発表していたが、その後メスと判明したため、記事も12月28日付で修正した】
バナー写真 :上野動物園のシャンシャン(公益財団法人東京動物園協会提供=時事、2022年5月9日撮影)