福島県産米、業務用需要にシフト:一般消費者は消極的?
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福島県産のコメの業務用シフトが進んでいる。福島県内の卸売業者の出荷先は、震災前の2008年産米は75%が小売業者だったが、15年産米では小売業者が37.4%までに減少する一方で、震災前はほとんどなかった中食業者が37%に拡大した。
2011年の東京電力福島第1原発事故直後に、農水産物から国の規制値を超える放射性物質が検出されたことで、福島県の一次産業は大きな痛手を受けた。厳しい検査体制によって規制値を超えるものは市場に出回らない仕組みとなっているうえ、近年では基準値を超えるものはほとんど出ないが、根強い風評被害が残っている。
農林水産省がまとめた「2017年度福島県産農産物等流通実態調査」によると、福島県産のコメは震災直後に小売店の棚から外され、その後、棚に戻されるきっかけがないまま、定番商品としての地位を失った状態にあるという。
調査では、全国の消費者997人を対象にコメの購入意向についてアンケートを実施。「他の産地産と同等以上の価格でも購入」「最頻購入産地は福島県である」と福島県産米の購入に積極的だった人が全体の25%だったのに対して、「他産地より安ければ購入」27.6%、「福島県産しか取り扱いがなければ購入」13.3%とあまり積極的ではない人が多い。さらに、「福島県産しか取り扱いがない場合には購入しない」が13.1%と、安全性に対する不安が払しょくされていないことが浮き彫りになった。
一方、2014年産までは、福島県産米の価格と全国平均価格が拡大していたために、値ごろ感が求められる中食・外食産業からの需要が高まった。「福島県産米は価格の割に食味が良い」として、おにぎりや弁当などの中食業者が食味を向上させるためのブレンド米として採用するケースが多い。ただ、ここ数年は価格が上がってきたため、外食産業の中には、より低価格な産地に切り替えるところも出てきているという。
福島県は、消費者の信頼回復のため、2012年産米から全量・全袋検査を実施している。国が食品衛生法で定める「1キロあたり100ベクレル」の基準を超えたコメは、検査初年度こそ71袋(全体の0.0007%)あったが、2015年産以降は、基準値超えは3年連続でゼロだった。2017年産に関しては、はほぼ100%が検出限界値である25ベクレル未満だった。
バナー写真 : PIXTA