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日本人の海外旅行:20代の出国率、90年代水準に回復

社会

JTBによる見通しでは、2018年夏休みの海外旅行人数は前年比4.1%増の283万人と好調だ。だが、1964年の「海外旅行自由化」以降の全体的な傾向は2012年の1849万をピークに横ばい傾向。その中で、低迷していた若者の出国率に回復の兆しが見える。

日本人の観光目的の海外渡航は、1964年4月1日の海外旅行自由化が契機となった。それ以前は業務渡航や留学目的が主だった。「自由化」とは、国際通貨基金 (IMF) 14条国(IMF協定第14条により為替制限の存続を認められた加盟国)から8条国(IMF協定第8条の規定により為替制限を撤廃した加盟国)への移行を指す。64年の海外渡航者数は12万8000人。その後、海外パッケージ・ツアーの普及、為替レートの変動相場制への移行(73年)、プラザ合意(85年)による円高ドル安の動き、日本人の所得向上、日本人への観光ビザ免除国・地域の拡大を背景として、海外旅行者数は順調に増加した。

2000年1781万9000人、12年には過去最高の1849万1000人に達するが、これまでに年間2000万人を超えることは一度もなく、1500~1800万人台の間を行き来している(重症急性呼吸症候群=SARSならびにイラク戦争の影響のあった03年を除く)。

日本人海外旅行者数の横ばい傾向が続く中で、若者層には変化があった。20代の日本人の海外出国者数を見ていくと、1996年には過去最高の462万9000人を記録したが、その後は減少が続き、2008年には261万8000人となった。20代の若者の人口も減少している (1996年1883万人、2017年1192万人) 。そこで、出国率(人口に占める延べ出国者数の比率)を見ると、96年の20代の出国率は24.6%であったが、08年には18.4%に低下した。若者の海外出国率が最も高かった90年代半ばと比較して、2000年代後半の若者の出国率が全体として低迷する「若者の海外旅行離れ」が見られた。

2010年以降の20代の海外旅行の動向を見ると、12年に出国者数303万1000人、出国率23.4%、17年には出国者数304万5000人、出国率25.5%となった。人口減少に伴い出国者数の実数自体は戻っていないが、出国率は1990年代半ばの水準に回復しており、若者の海外旅行が活性化する兆しが見られる。

データ監修=中村哲玉川大学観光学部教授

バナー写真:海外旅行客らで混雑する成田空港のチェックインカウンター=2015年7月4日、千葉・成田空港(時事)

若者 海外旅行