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国民栄誉賞 : 車いすテニスの国枝慎吾選手に授与決定、パラスポーツで初

社会

政府は車いすテニスの第一人者で1月に引退を表明した国枝慎吾さんに国民栄誉賞を授与することを決めた。表彰式は3月17日の予定。これにより、受賞者は1977年に同賞が創設されて以来、27人1団体となる。

プロ野球・王貞治選手の本塁打世界記録をたたえるために創設

国民栄誉賞は、内閣総理大臣表彰のひとつ。福田赳夫内閣時代の1977年に定められた国民栄誉賞表彰規定に基づいて行われている。その目的は「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えること」と規定されている。プロ野球で本塁打世界記録を達成した王貞治氏をたたえるために創設したのが始まり。

政府は2023年3月3日、テニスの四大大会とパラリンピックを全て制する「生涯ゴールデンスラム」を達成するなど、長年にわたり車いすテニスのトップ選手として活躍した国枝慎吾さんに国民栄誉賞を授与することを決めた。パラスポーツ選手の受賞は初めて。国枝さんの四大大会の優勝はシングル28回、ダブルス22回。パラリンピックではシングルスとダブルスで合わせて金メダル4個を獲得し、世界ランキング1位で引退を表明した。国枝さんも含めてこれまで27人1団体が受賞、うち12人は没後受賞だった。岸田文雄内閣としては、初の授与となる。

受賞者の分野別内訳は、プロ野球選手、俳優、作曲家が各4人、大相撲力士、歌手、レスリング選手が各2人。漫画家、映画監督、柔道選手、冒険家、陸上競技選手、囲碁棋士、将棋棋士、フィギュアスケート選手、車いすテニス選手が各1人とサッカー1団体。

イチロー選手ら辞退者は4人

これまでに授与を打診されたが、辞退した人もいる。通算939盗塁で当時の世界記録を達成したプロ野球の福本豊氏(1983年、本人が固辞)、作曲家の古関裕而氏(1989年、没後に受賞内定したが、遺族が辞退)、イチロー選手(2001年、米メジャーリーグで日本人選手史上初の首位打者を獲得したことなどで小泉内閣から打診されたが、「賞をいただくことは光栄だが、まだ現役であり発展途上の選手なので…」と辞退。2004年にも授与が検討されたが、再度固辞した。

21年には、大リーグ・エンゼルスで二刀流の活躍をした大谷翔平選手が授与を打診されたが、「早すぎる」と辞退した。

国民栄誉賞 受賞者一覧

  1. 王貞治(プロ野球選手/1977年9月5日/福田赳夫内閣)
    プロ野球でホームラン世界記録(756本)達成
  2. 古賀政男(作曲家/1978年8月4日/福田赳夫内閣)
    数多い「古賀メロディー」作曲による業績
  3. 長谷川一夫(俳優/1984年4月19日/中曽根康弘内閣)
    卓越した演技と映画演劇界への貢献
  4. 植村直己(冒険家/1984年4月19日中曽根康弘内閣)
    世界5大陸の最高峰登頂などの実績
  5. 山下泰裕(柔道選手/1984年10月9日/中曽根康弘内閣)
    柔道の分野で前人未踏の記録達成
  6. 衣笠祥雄(プロ野球選手/1987年6月22日中曽根康弘内閣)
    プロ野球の連続試合出場で世界新記録達成
  7. 美空ひばり(歌手/1989年7月6日/宇野宗佑内閣)
    歌謡曲を通じて国民に夢と希望を与えた
  8. 千代の富士貢(大相撲力士/1989年9月29日/海部俊樹内閣)
    通算勝ち星最高記録更新、相撲界への著しい貢献
  9. 藤山一郎(歌手/1992年5月28日/宮沢喜一内閣)
    歌謡曲を通じて国民に希望と励ましを与え、美しい日本語の普及に貢献
  10. 長谷川町子(漫画家/1992年7月28日/宮沢喜一内閣)
    「サザエさん」を通じて戦後の日本社会に潤いと安らぎを与えた
  11. 服部良一(作曲家/1993年2月26日/宮澤喜一内閣)
    数多くの歌謡曲を作り、国民に希望と潤いを与えた
  12. 渥美清(俳優/1996年9月3日/橋本龍太郎内閣)
    映画「男はつらいよ」シリーズを通じ人情味豊かな演技で国民に喜びと潤いを与えた
  13. 吉田正(作曲家/1998年7月7日/橋本龍太郎内閣)
    「吉田メロディー」の作曲により、国民に夢と希望と潤いを与えた
  14. 黒澤明(映画監督/1998年10月1日/小渕恵三内閣)
    数々の不朽の名作が国民に深い感動を与え、世界の映画史に輝かしい足跡を残した
  15. 高橋尚子(陸上競技選手/2000年10月30日/森喜朗内閣)
    2000年シドニー五輪女子マラソンで優勝し、陸上競技で日本女子初の金メダルを獲得
  16. 遠藤実(作曲家/2009年1月23日/麻生太郎内閣)
    広く国民に愛される多数の歌謡曲を世に送り出し、国民に希望と潤いを与えた
  17. 森光子(俳優/2009年7月1日/麻生太郎内閣)
    「放浪記」で2000回を超える主演を務め、国民に夢と希望と潤いを与えた
  18. 森繁久彌(俳優/2009年12月22日/鳩山由紀夫内閣)
    芸能分野の第一線で長年活躍し、優れた演技と歌唱により国民に夢と希望を与えた
  19. なでしこジャパン(女子サッカーチーム/2011年8月18日/菅直人内閣)
    最後まで諦めない姿勢でワールドカップを制し、東日本大震災の被災者らに困難に立ち向かう勇気を与えた
  20. 吉田沙保里(レスリング選手/2012年11月7日/野田佳彦内閣)
    世界選手権と五輪合わせて13大会連続世界一を達成、国民に深い感動と勇気を与えた
  21. 大鵬幸喜(大相撲力士/2013年2月25日/安倍晋三内閣)
    史上最多の32回優勝を達成、昭和の大横綱として国民的英雄となり夢や希望を与えた
  22. 長嶋茂雄(プロ野球選手・監督/2013年5月5日/安倍晋三内閣)
    野球史に残る輝かしい功績と顕著な貢献。国民的スターとして社会に明るい夢と希望を与えた
  23. 松井秀喜(プロ野球選手/2013年5月5日/安倍晋三内閣)
    野球界に世界的な功績と新たな足跡を残し社会に大きな感動と喜び、青少年に夢と希望を与えた
  24. 伊調馨(レスリング選手/2016年10月20日/安倍晋三内閣)
    五輪史上初の女子個人4連覇という世界的偉業を成し遂げ、深い感動と勇気を与えた
  25. 羽生善治(将棋棋士/2018年2月13日/安倍晋三内閣)
    将棋界初の永世7冠という歴史に刻まれる偉業を達成し国民に夢と感動を与えた
  26. 井山裕太(囲碁棋士/2018年2月13日/安倍晋三内閣)
    囲碁界初の2度の7冠同時制覇という歴史に刻まれる偉業を達成し国民に夢と感動を与えた
  27. 羽生結弦(フィギュアスケート選手/2018年7月2日/安倍晋三内閣)
    フィギュアスケート男子シングルで66年ぶりの五輪連覇など、歴史に残る快挙で希望と勇気を与えた
  28. 国枝慎吾(車いすテニス選手/2023年3月17日/岸田文雄内閣)
    長く車いすテニス界の第一人者として活躍、パラスポーツの社会的認知度の拡大、スポーツの発展に貢献し、国民に夢と感動を与えた

*2023年3月3日現在。名前下線は没後受賞。

(2018年6月4日公開、同年7月2日、23年3月3日更新)

バナー写真 : 2022年10月8日、楽天テニス車いす部門シングルス決勝での国枝選手のサーブ(時事)

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