東日本大震災から7年:被災地と復興の現状
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いまだに7万5000人が避難
復興庁が2018年1月にまとめた震災による避難生活者は、約7万5000人。この2年で10万人以上減ったが、まだプレハブ型仮設住宅での生活を余儀なくされている被災者が約2万人いる。親戚、知人宅に身を寄せている避難者も約2万人に上る。
福島県は17年3月末をもって、避難指示区域外から全国に避難している「自主避難者」への住宅無償提供を打ち切り。このタイミングで避難先の各市町村が自主避難者の多くを「避難者」に計上しなくなったこともあり、公的な数字としての避難者数は大きく減っている。
震災後の避難生活による体調悪化、自殺などによる「震災関連死」は、この2年で200人余り増えた。
2016 | 2018 | ||
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震災死者 | 1万5894人 | 警察庁、17年12月8日現在 | |
行方不明者 | 2546人 | 同上 | |
震災関連死 | 3407人 | 3647人 | 復興庁、17年9月末 |
避難生活者 | 約17万8000人 | 約7万5000人 | 復興庁、18年1月 |
うちプレハブ型仮設住宅入居者数 | 約2万人 | 復興庁、17年12月 |
高台移転の宅地造成、8割が完成
避難者の住宅の受け皿の一つとなる「災害公営住宅」は計画の90%、移転して自宅を再建するための宅地も80%が完成した。復興庁は「住宅再建は着実に進んでおり、2018年度にはおおむね完了する」としている。
住宅・まちづくり
2014 | 2016 | 2018 | |
---|---|---|---|
災害公営住宅完成戸数 | 9%完成 | 58%完成 | 3万405戸の計画に対し2万7573戸完成(92%) |
支援金を支給されて再建済み、再建中の住宅 | 11.1万件 | 12.7万件 | 13.9万件 |
高台移転による宅地造成 | 5%完成 | 45%完成 | 1万8000戸の計画に対し1万4636戸完成(80%) |
復興庁、2018年1月
福島の風評被害、今も
復興庁によると、被災3県(岩手県、宮城県、福島県)の製造品出荷額等は、震災前の水準まで回復。津波被災農地の84%が営農再開可能となり、被害を受けた水産加工施設のうち93%が業務を再開した。
被災地域の「グループ補助金」交付先企業のうち、震災直前の売上水準まで回復したのは45%。調査に対し、建設業の8割が「回復した」と回答した一方、水産・食品加工業では3割にとどまるなど、業種別にばらつきがある。
原発事故の風評被害は、今も続いている。福島県を代表する農畜産品である桃、肉用牛(和牛)の価格は震災後、全国の卸売価格の平均と比べ、福島産の価格が1割から2割低くなっている。
観光客の数も、まだ震災前の水準を約1割下回っている。
産業
2014 | 2016 | 2018 | |
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津波被災農地のうち、営農再開が可能となった面積の割合 | 63% | 70% | 84% |
業務再開した水産加工施設の割合 | 80% | 87% | 93% |
復興庁、2018年1月
福島の現状:避難指示区域は徐々に縮小
福島第1原子力発電所事故による放射線物質の放出・拡散により、原発周辺の双葉町、大熊町、浪江町の一部などが現在も避難指示区域に指定されている。
避難指示区域は①放射線量が高く、立ち入り制限のある「帰還困難区域」、②居住制限区域、③住民の帰還に向けた復旧・復興準備を進める「避難指示解除地域」の3種類に分けられる。震災直後は11の自治体に及んだが、2014年4月から徐々に縮小し、避難指示が解除された地域では住民が戻る動きも出ている。
しかし、長い避難生活を経て、「もう故郷に戻らない、戻れない」元住民も多い。復興庁や福島県、各市町村が15、16年度に行った「住民帰還意向調査」によると、双葉町、大熊町、富岡町、浪江町では元住民の半数以上が「戻らない」と回答した。
福島県によると、17年10月の時点で約5万5000人が避難生活を余儀なくされており、うち約3万5000人が県外で暮らす。県内の住宅、公共施設などの除染はおおむね終了し、空間放射線量は低下傾向にある。17年11月の福島市の放射線量は1時間当たり0.15マイクロシーベルト。震災前の平常時(同0.04マイクロシーベルト)に徐々に近づいている。
果てしなく続く廃炉作業
東日本大震災で史上最悪の原子力災害を引き起こした東京電力福島第1原発では、廃炉作業が続いている。2017年にはロボットなどを使い、1、2、3号機の格納容器内の調査に着手。事故で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の状況を知り、デブリ取り出しの具体的な工法を決めることを目的に行ったが、十分な情報を得ることはできなかった。
政府と東電は17年9月、廃炉に至る工程表を2年ぶりに改訂。18年度前半を予定していた①燃料デブリ取り出しの工法決定、②最初に取り出しを着手する号機選定―という目標を断念し、19年度中に先送りした。20年度としていた1、2号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し開始は、「23年度めど」と、3年遅らせた。廃炉完了まで「30~40年」とする目標は維持した。
バナー写真:7年ぶりに出荷される青ノリからゴミを取り除く福島県相馬市の水産卸会社の従業員。放射性物質検査で国の基準値を大幅に下回ることが確認され、出荷再開にこぎ着けた=2018年2月5日(時事)