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また見直し——「あきれた」東京オリンピック

社会

2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は9月1日、デザイン盗作疑惑が持ち上がっていた公式エンブレムの使用中止にとうとう踏み切った。

いったい何回目のやり直しなのか

いったん、正式発表し、すでに大会関係のポスターなどでの使用が始まっていた段階になっての中止決定は、本来なら異例である。しかし、つい最近、7月7日に、これまた建設予算が当初より過大に膨れ上がったことで非難が集中していたメインスタジアムの新国立競技場建設計画を、着工間際になって安倍首相が政治判断で白紙撤回、設計コンペからのやり直しを決めたばかりであった。今回の使用中止も、同様に政治的な判断の可能性が高い。

それにしても日本と日本国民にとっては、とんでもなく恥さらしの事態ではあるが、今回のオリンピックでは、この2件以外にも決定したはずの計画のやり直しが目立つ。招致計画では、会場の85%が東京・晴海の選手村から8キロメートル以内にある、「コンパクトなオリンピック」がウリであった。ところが、招致計画の建設費の算定が相当に甘いものであることが後に発覚。会場建設のかなりの部分を担当する東京都からのクレームで、既存施設の活用を柱に大幅に計画を見直し。結果として、千葉、埼玉、神奈川という隣接県にまで会場が広がる広域開催となった。

これまでの「やり直し」を一覧にしてみた。

2020東京オリンピック計画変更一覧

プロジェクト 当初計画 問題点 その後の推移
メイン会場 コンペでザハ・ハディド氏の案に決定。建設費当初試算約1300億円。 実施設計の段階で建設費3000億円超に。2度の設計見直し後も2500億円超。 2015年7月、白紙撤回。コンペ再募集決定。
バトミントン会場 夢の島ユースプラザアリーナA新設、建設費AB合計364億円 見直しの結果合計683億円に膨らむ 建設中止、調布市の既存施設に会場変更
バスケットボール会場 夢の島ユースプラザアリーナB新設 建設中止、さいたま市の既存施設に会場変更
水球会場 ウォーターポロアリーナ新設 総予算圧縮 建設中止、既存施設の東京辰巳国際水泳場に会場変更
セーリング会場 若洲オリンピックマリーナ新設、建設費92億円 見直しの結果417億円に膨らむ 建設中止、既存施設の神奈川県江の島ヨットハーバーに会場変更
自転車トラック競技会場 有明ベロドーム新設 総予算圧縮 静岡県の既存施設の変更検討
ボート・カヌー会場 海の森水上競技場新設、建設費69億円 見直しの結果1038億円に膨らむ レイアウト変更、491億円に
馬術会場 夢の島競技場内に仮設施設を設ける 総予算圧縮 既存施設の馬事公苑に会場変更
レスリング・フェンシング・テコンドー会場 既存施設、東京ビックサイトで実施 放映権を持つ海外放送局が会場の狭さを指摘 既存施設、千葉県の幕張メッセに会場変更
大会公式エンブレム コンペで佐野研二郎氏の案に決定。2015年7月14日発表。 ベルギー・リエージュの劇場ロゴに酷似。使用差し止め訴訟も 2015年9月1日、組織委員会、使用中止を決定。

杜撰の根源はどこに

はっきり言って、見てくれだけよくて、中身をちゃんと詰めていない、いい加減な計画や作業ばかりなのである。エンブレムの決定と中止の過程については、まだこれから詳細が明らかになるであろうが、審査に厳格さを欠いていたことは否めない。

そもそも日本の公共プロジェクトの世界は、利権関係者だけの「お手盛り」の世界という批判が永く続いていた。それゆえ、近年は公共支出や政治への国民の監視が厳しさを増し、事業仕分けに代表されるように、事業選定から予算に至るまで相当に絞り込まれるのが通例となっている。

にもかかわらず、というか、それゆえに久々のビッグプロジェクトに舞い上がったとでもいうのだろうか。

ここまでプロジェクトの運営が杜撰となると、当初計画を立てたオリンピック招致委員会、それを改変した現在の運営主体のオリンピック運営委員会、加えて新国立競技場の建設主体である日本スポーツ振興センターは、責任問題を通り越して今からでもその能力を問い直さなければならないであろう。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の役員一覧

  • 名誉会長  日本経済団体連合会名誉会長、キヤノン会長兼社長CEO  御手洗冨士夫
  • 会長 元内閣総理大臣、日本体育協会名誉会長  森喜朗
  • 副会長 日本経済団体連合会スポーツ推進委員会委員長、トヨタ自動車社長  豊田章男
    文部科学副大臣  丹羽秀樹
    日本スポーツ振興センター理事長  河野一郎
    国際オリンピック委員会委員、日本オリンピック委員会会長  竹田恆和
    国際パラリンピック委員会理事、日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会委員長  山脇康
    東京都副知事  秋山俊行
  • 専務理事(事務総長) 大和総研理事長  武藤敏郎
  • 常務理事(副事務総長) 元文部科学省スポーツ・青少年局長  布村幸彦
    元東京都副知事  佐藤広
  • 常務理事 日本オリンピック委員会副会長、日本セーリング連盟会長  河野博文
  • 理事 日本オリンピック委員会副会長兼専務理事  青木剛
    日本オリンピック委員会常務理事・選手強化本部長、参議院議員  橋本聖子
    日本オリンピック委員会理事・アスリート専門部会部会長  荒木田裕子
    日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会事務局長  中森邦男
    東京都オリンピック・パラリンピック準備局長  中嶋正宏
    前内閣危機管理監、元警視総監  米村敏朗
    オリンピアン(陸上)、東京医科歯科大学教授、ミズノ株式会社  室伏広治
    オリンピアン(柔道)、谷本歩実
    オリンピアン(体操)、日本体育大学助教  田中理恵
    パラリンピアン(水泳)、日本テレビ放送網  成田真由美
    日本陸上競技連盟会長  横川浩
    日本体育協会専務理事  岡崎助一
    日本体育協会理事、嘉悦大学准教授  ヨーコ ゼッターランド
    2020年東京オリンピック・パラリンピック大会推進議員連盟幹事長代理  萩生田光一
    東京都議会議員、2020年オリンピック・パラリンピックを成功させる議員連盟会長  川井しげお
    東京都議会議員、オリンピック・パラリンピック推進対策特別委員会委員長  髙島なおき
    日本政府代表、中東和平担当特使  河野雅治
    住友電気工業社長、近畿陸上競技協会副会長、日本陸上競技連盟評議員、大阪陸上競技協会会長 松本正義
    麻生セメント社長  麻生泰
    デンソー副社長  小林耕士
    文部科学省スポーツ・青少年局長  久保公人
    作詞家  秋元康
    写真家、映画監督  蜷川実花
    コモンズ会長  高橋治之
  • 監事  日本オリンピック委員会監事  黒川光隆
    東京都財務局長  長谷川明
カバー写真=いったんは大々的に発表して走り出していたが……。東京都庁前でのエンブレム発表セレモニー(時事)

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