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元気を取り戻した日本のおもちゃ業界「東京おもちゃショー2015」

経済・ビジネス

日本のおもちゃ産業が元気を取り戻している。かつては世界第2位の生産国だったが、急速な少子化や欧米市場の縮小で低空飛行が続いてきた。しかし、2014年度の売り上げは『妖怪ウォッチ』の空前の大ヒットで、前年度比9%増の7367億円(日本玩具協会調べ)と、過去10年間で最高を記録した。

おもちゃ産業の変化を表す“キーワード”

日本のおもちゃは、これからどう変化、発展していくのか。「日本おもちゃショー2015」に展示された新しい技術や新しい機構を導入した商品の中に、その方向性とキーワードがいくつか見えている。

日本玩具協会によれば、そのキーワードは「夢の実現」、「ウェアラブル」、「インタラクティブ&コミュケーション」などだ。「長年の夢を実現する」——、そんな商品の1つが、本物と同じように磁力浮上・走行を実現した「リニアライナー超電導リニアL0系スペシャルセット」(タカラトミー)。「イノベイティブ・トイ部門」賞に選ばれた。実物の90分の1の大きさだが、そのスケールスピードは時速500キロを超える。

「リニアライナー超電導リニアL0系スペシャルセット」(タカラトミー、税込み3万7800円)

もう1つの「夢の実現」は、古典的なおもちゃである野球盤を進化させ、投手の投げる球が空中を飛ぶようにした「野球盤3Dエース」(エポック社)。臨場感が一気に高まったと評価され、「ボーイズ・トイ部門」賞を受賞した。

「野球版3Dエース」(エポック社、税込み7538円)

「ウェアラブル」や「飛ぶ」も

「ウェアラブル」は、IT世界のトレンドをいち早く商品化したもの。セガトイズの「Jewel watch(ジュエルウォッチ)」は、女の子のニーズを取り込んだデザインと300通りから選べる「動く・しゃべる文字盤」を持つ時計。日英両言語で対応する優れものだ。「ガールズ・トイ部門」賞に輝いた。

「Jewel watch(ジュエルウォッチ)」(セガトイズ、税込み7020円)

もう1つのキーワードは、規制問題が騒がしい“ドローン”に象徴される「飛行」。カメラ付き超小型ヘリコプター「ナノファルコンデジカム」(シー・シー・ピー)は、おもちゃのレベルを超えた精密機械だ。ヘリ搭載のデジカメで撮影した静止画、動画を保存し、パソコンで確認でき、“小型秘密兵器”のような印象さえある。「ハイターゲット・トイ部門」賞を受賞した。

カメラ付き超小型ヘリコプター「ナノファルコンデジカム」(シー・シー・ピー、税込み9698円)

さらに注目されるキーワードは「時代はアナログ」。古くからあるおもちゃを新感覚で作り替えたもので、室内でも遊べる不思議な砂の「キネテイックサンド」(ラグスジャパン)、現代版けん玉「ケンダマクロス」(バンダイ)などが人気を博している。

最後に、高齢化対応で「オトナ男子・オトナ女子」を対象とした商品開発もこれから活発化する分野だ。映画「スターウォーズ」の12月公開に合わせた、アダルト世代に向けた高級志向の商品も目立っている。

文・原野 城治(ニッポンドットコム代表理事)

バナー写真:玩具見本市「東京おもちゃショー2015」にシー・シー・ピーが出展したカメラ付き超小型ヘリコプター=2015年6月18日、東京都江東区の東京ビッグサイト(時事)

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