師走総選挙、「アベノミクス」に審判
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GDPマイナス成長で消費増税延期
消費税再引き上げ是非の最終判断材料として注目されていたのは、今年7-9月期の国内総生産(GDP)統計。2014年11月17日発表の速報値は、実質GDP成長率が年率換算でマイナス1・6%となり、4-6月期に続き2四半期連続のマイナス成長となった。エコノミストの平均的予想をはるかに下回る結果で、市場には衝撃が走った。今年4月の8%への消費税引き上げなどが響き、GDPの約6割を占める個人消費が低迷、その後も回復していないことが浮き彫りになった。
第2次安倍内閣は2012年12月の発足以降、「デフレ経済からの脱却」を旗印に矢継ぎ早に政策を打ち出した。アベノミクスの「3本の矢」、すなわち第1の矢(大胆な金融政策)、第2の矢(機動的な財政出動)、第3の矢(成長戦略)により、企業収益の改善 → 賃金上昇や雇用拡大 → 家計消費の増加 → 景気上昇、といった経済の好循環を定着させようというものだ。こうした景気回復を「全国津々浦々で実感できるようにする」(安倍首相)としてきた。
野党側は消費増税の先送りに至った安倍内閣の経済政策について、「デフレ脱却を目指したアベノミクスの失敗」と批判している。これに対し、安倍首相は11月18日の記者会見で、「アベノミクスは確実に成果を挙げているが、(現在の経済情勢で)再増税を実施すれば、デフレ脱却も危うくなる」と判断。成長戦略を今後も着実に進めることで、「2017年4月の消費増税を確実に実行する。再び延期することはないと断言する」と明言した。
3本の矢の政策効果は道半ば
総選挙の大きな争点となるアベノミクスの2年間の評価をどうみたらよいのか――。日銀による大胆な金融政策は一定の効果を見せた。2013年4月の異次元緩和に続く今年10月の追加金融緩和は、急激な円安・株高を誘発した。この間、日経平均株価は下降局面はあったが、およそ7年ぶりに1万7000円台を回復。円相場も最近時点で1ドル=116~117円の円安水準となった。
財政出動も2度にわたる大型補正予算などで景気の下支えを図った。公共事業は増えたものの、地方経済が活気を取り戻すには至っていない。金融緩和による円安・株高で企業の景況感は改善し、雇用者数の増加や有効求人倍率の上昇など雇用統計で改善の傾向が見られる。大手企業を中心に賃金上昇の動きも出てきた。大手輸出企業では円安効果もあって収益も改善している。
その半面、円安によりガソリンや灯油など輸入価格の上昇に消費増税が加わり、中小企業や家計は負の影響も及び、個人消費の低迷が続いている。賃金アップが物価上昇に追い付いていない状況だ。雇用者の中には非正規雇用者も多く、所得格差も解消されていない。全体として3本の矢の政策効果は道半ばといえる。
アベノミクスの中間評価に国民の反応は
アベノミクスで最も重要とされる成長戦略については、2013年夏に策定した後、2014年6月に改訂版を策定した。この中に「女性が活躍する社会の実現」や景気回復が遅れている地方の経済活性化を目指す「地方創生」など、盛りだくさんのメニューをそろえた。しかし、構造改革や痛みを伴う政策課題の多くはまだ検討段階で、法整備を含めた本格的な実施はこれからである。具体的成果が出るのは、数年先になるようなテーマも少なくない。
日本経済を再生させるうえで、アベノミクスの必要性を訴える声は少なくないが、その成果を実感していない人も多い。安倍内閣は成長戦略の推進とともに消費増税実施(2017年4月)を公約し、併せて2020年度までに政府予算の赤字をゼロにする財政健全化目標の堅持を表明した。一連の経済政策を有権者がどのような評価を下すか。選挙の結果とともに注目される。
カバー写真=11月18日、記者会見で消費税引き上げ延期と衆議院解散を発表する安倍首相(提供・時事)