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「靖国神社」の基礎知識

政治・外交 社会

毎年8月15日の終戦記念日になると、首相や閣僚の靖国神社参拝問題が大きくクロースアップされる。そのたびに、中国、韓国などが厳しい批判や反発を繰り返し、関係が冷却化している。安倍晋三首相は2013年12月26日に靖国神社を参拝したが、その影響で日中、日韓両国関係は急速に悪化した。国内外に波紋を投げかける靖国神社とは、そもそもどのような神社なのか。それを取り巻く宗教的、歴史的、そして政治的な意味合いなどについて、日本人ですら意外に知らない基礎情報をまとめてみた。

参拝の記録

天皇の靖国参拝

昭和天皇は、戦後すぐから数年おきに計8回参拝したが、1975年11月21日を最後に参拝していない。今上天皇も即位後の参拝はない。

戦後の歴代首相による在任中の参拝記録

(4月は春季例大祭、10月は秋季例大祭)

東久邇稔彦 1回(45年8月18日)
幣原喜重郎 2回(45年10月23日、11月20日)
片山 哲 なし
芦田 均 なし
吉田 茂 5回(51年10月18日、52年10月17日、53年4月23日、10月24日、54年4月24日)
鳩山一郎 なし
石橋湛山 なし
岸 信介 2回(57年4月25日、58年10月21日)
池田勇人 5回(60年10月18日、61年6月18日、11月15日、62年11月4日、63年9月22日)
佐藤栄作 11回(65年4月21日、66年4月21日、67年4月22日、68年4月23日、69年4月22日、10月18日、70年4月22日、10月17日、71年4月22日、10月18日、73年4月22日)
田中角栄 5回(72年7月8日、73年4月23日、10月18日、74年4月23日、10月19日)
三木武夫 3回(75年4月22日、8月15日、76年10月18日)
福田赳夫 4回(77年4月21日、78年4月21日、8月15日、10月18日)
大平正芳 3回(79年4月21日、10月18日、80年4月21日)
鈴木善幸 9回(80年8月15日、10月18日、11月21日、81年4月21日、8月15日、10月17日、82年4月21日、8月15日、10月18日)
中曽根康弘 10回(83年4月21日、8月15日、10月18日、84年1月5日、4月21日、8月15日、10月18日、85年1月21日、4月22日、8月15日)
竹下 登 なし
宇野宗佑 なし
海部俊樹 なし
宮沢喜一 (参拝したかしないかを明らかにしていない)
細川護煕 なし
羽田 孜 なし
村山富一 なし
橋本竜太郎 1回(96年7月29日)
小渕恵三 なし
森 喜朗 なし
小泉純一郎 6回(01年8月13日、02年4月21日、03年1月14日、04年1月1日、05年10月17日、06年8月15日)
安倍晋三(第1次) なし
福田康雄 なし
麻生太郎 なし
鳩山由紀夫 なし
菅 直人 なし
野田佳彦 なし
安倍晋三(第2次) 1回(13年12月26日)

(*靖国神社の記録などを基に編集部作成。2014年3月現在)

 

用語解説

・「玉串料」 玉串(たまぐし)とは、榊(さかき)などの常緑樹の枝に紙垂(しで)をつけたもので、結婚式や法要といった神道の儀式で参拝者や神職によって神前に捧げられる。神社に祈祷を依頼する際に、玉串の代わりに納める金銭のことを「玉串料」という。

・「私的参拝、公的参拝」 公的参拝か私的参拝かをめぐる議論は多いが、明確に区別するのは難しい。靖国参拝で注目されるのは、首相や閣僚、国会議員らが参拝するケースである。例えば、中曽根元首相が公式参拝した際には、憲法の「政教分離の原則」から逸脱しないよう、神道儀式にあたる「玉串」の奉納はせず、一般的な「供花」を公費で行った。私的参拝については、三木元首相が参拝した際は①公用車不使用、②玉串料を私費で支出、③肩書きを付けない、④公職者を随行させない――という「三木4原則」なるものを示した。ただ、これは当時の三木首相の個人的な発言であり、政府見解ではない。

・「千鳥ヶ淵戦没者墓苑」 1959年に国が建設した墓苑。東京都千代田区三番町にある。第二次世界大戦時に海外で亡くなった戦没者のうち、遺族に渡らなかった35万8000柱余りの遺骨が眠る。2013年10月に訪日したケリー米国務長官、ヘーゲル米国防長官は、同墓苑を訪れて献花した。

・「遊就館」 英霊の遺品や資料、戦争で使われた兵器などを展示する、靖国神社内に設けられた施設。1882年に開館したが、1945年9月に閉館。1986年に再開された。満州事変(1931年)から終戦に至るまでの日本の対外戦争政策について、これを肯定するトーンで展示・解説がされている。

・「鎮霊社」 本殿の南側に1965年につくられた祠。幕末以降の戦争・動乱で亡くなったもののうち靖国神社本殿に合祀されていない日本人、世界中の戦争で戦死した人々を祀っている。2013年12月に安倍首相参拝の際は、本殿とともに鎮霊社にも参拝した。

(nippon.com編集部作成)

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