Japan Data

「特定秘密保護法」が成立

政治・外交

外交や安全保障に関する機密情報を守るための「特定秘密保護法」が2013年12月6日、成立した。政府は新設した国家安全保障会議(日本版NSC)とともに、同法を安保防衛戦略に必要な「車の両輪」としている。しかし、国の安全保障と国民の知る権利という二つの法益調整も求められている。

国の外交や安全保障にかかわる機密情報を守るための「特定秘密保護法」が2013年12月6日、成立した。わが国を取り巻く国際環境が厳しさを増す中で、日本の安全保障に関する情報のうち特に秘匿が必要な情報の漏えいを防ぎ、国および国民の安全確保に資するのが同法の目的、としている。

第2次安倍内閣は、外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議(日本版NSC)」とともに、特定秘密保護法を安保防衛戦略に必要な「車の両輪」と位置づけている。同法の成立で、同盟国や友好国と重要情報の交換・共有を進めるうえで求められていた、安全保障に関する機密情報の保全態勢が欧米並みに整うとしている。

特定秘密保護法に対しては、国民の「知る権利」が脅かされるのではないかなどとして、野党のほか報道機関や法律家、市民団体などから慎重論や反対論が根強かった。しかし、ねじれ解消後の国会で多数議席を占める与党側が強行採決で成立させた。

「特定秘密保護法」の概要

特定秘密の指定
  • 閣僚ら行政機関の長が「特定秘密」を指定する。
  • 特定秘密の対象となるのは、(1) 防衛、(2) 外交、(3) 特定有害活動(スパイなど)の防止、(4) テロリズムの防止――の4分野で、漏えいが日本の安全保障に著しい支障を与える恐れがある情報のうち、特段の秘匿が必要なもの。
指定の有効期間
  • 指定の有効期間は5年で、更新可能。指定期間が30年を超える延長には内閣の承認が必要。
  • 指定期間は最長で60年。ただし、次の7項目に関する情報は例外とし、60年以上の延長が可能。
  • *例外7項目…(1) 武器、弾薬、航空機など、(2) 外国政府や国際機関との交渉、(3) 情報収集活動の手法や能力、(4) 人的情報源に関する情報、(5) 暗号、(6) 外国政府や国際機関から60年超の指定を条件に提供された情報、(7) 前各号に準じるもので、政令で定める重要な情報。
  • 秘密指定の要件を満たさなくなったときは、有効期間内でも指定を解除する。
取扱者に対する適性評価
  • 特定秘密の取扱者は、「適性評価」を受けなければならない。
  • ただし、行政機関の長、政務三役、首相補佐官などは適正評価を受けなくてよい。行政機関の職員のほか、行政機関との契約事業者も適正評価の対象となる。
  • 評価はテロリズムとの関係、犯罪歴、精神疾患、飲酒の節度、経済的状況などを調査する。
漏えい者への罰則
  • 特定秘密の取扱者が特定秘密を漏らしたときは10年以下の懲役。
  • 人を欺いたり、脅迫、施設侵入、不正アクセスなどで特定秘密を取得した者は10年以下の懲役。
  • 特定秘密を漏らすことを共謀、教唆、扇動した者は5年以下の懲役。
解釈適用
  • 国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならない。
  • 出版または報道に従事する者の取材行為は、公益を図る目的を有し、かつ法令違反や不当な方法でない限りは、正当な業務による行為とする。
付則(第三者機関の設置など)
  • 公布日から1年以内に政令で定める日から施行。
  • 法施行後5年間で特定秘密の保有がない行政機関は、特定秘密を取り扱う権限を失う。
  • 政府は、特定秘密の指定や解除に関する基準などが、安全保障に資するものかどうかを独立した立場で検証・監察できる新機関の設置を検討し、所要の措置を講ずる。

安倍晋三