Japan Data

憲法改正手続きと96条改正問題

政治・外交 社会

憲法改正問題をめぐり憲法改正の発議要件である96条見直し問題が焦点になっているが、憲法改正手続きがどのように行われるのか、国民に周知し、十分に理解されているとは言いがたい。

憲法改正国民投票法の全面施行は2010年5月から

憲法改正のための手続法である「日本国憲法の改正手続に関する法律」(以下「憲法改正国民投票法」)が国会で可決、成立したのは2007年(平成19年)5月14日。同法が全面施行されたのは2010年(平成22年)5月18日だった。全面施行まで3年の年月がかかっている。しかし、憲法改正をめぐる本格的な動きは、国会に憲法調査会を設置するための「国会法の一部を改正する法律」が成立した1999年(平成11年)7月29日以来で、憲法改正の手続法の施行まで実に11年かかったことになる。

衆議院憲法審査会関係資料をもとに作成

3条件付きで「憲法改正国民投票法」を施行

憲法改正国民投票法の施行で、何が変わったかだが、国民に提案する憲法改正原案については提案者のほかに、衆議院で100人以上、参議院で50人以上の賛成があれば発議が可能となった。しかし、同法には3つの重要な案件が付いている。

その1つは、「選挙権年齢等を18歳に引き下げること」。現行の選挙権は20歳からとなっている。ちなみに、米国は1971年の法改正で選挙権年齢を18歳に引き下げている。国民投票の年齢を定めている仏、伊両国は18歳、韓国は19歳となっている。

第2の条件は、「公務員の政治行為に係る制限の緩和について検討すること」。

第3の条件は、「国民投票を他の国政課題へ拡大すること」。

以下の要件について、現在、衆参両院の憲法審査会で審議が行われている。特に、第1と第2の条件については、憲法改正国民投票法施行前に解決すべき事項とされていながら、いまだに解決の見通しが立っていない。

安倍首相の施政方針演説で浮上した“96条先行改正”

改正手続の条件が解決されたとしても、改正要件、つまり憲法改正の発議要件である「衆参両院の3分の2以上」が緩和されるわけではない。こうした中で出てきたのが、現憲法「第9章」が定める条項96条の先行改正の動きだ。

96条は、「この憲法の改正は、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」と定めている。

安倍晋三首相は、2013年2月28日の国会における施政方針演説の中で「憲法審査会の議論を促進し、憲法改正に向けた国民的議論を深めようではありませんか」と強調し、96条の先行改正への姿勢を打ち出した。これと呼応するように、超党派議連「創生『日本』」が同3月5日、運動方針に「憲法改正に向けた流れを強める」の項目を追加。さらに同議連所属120人と自民党を含む超党派議連「憲法96条改正を目指す議員連盟」が同3月7日、活動の再開を確認した。

さらに、民主党、日本維新の会、みんなの党の議員らによる「憲法96条研究会」も同3月15日に第1回の勉強会を開催した。

予断許さぬ96条先行改正

自民党の「日本国憲法改正草案」によると、96条改正案は「衆議院又は参議院の議員の発議により、両院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が発議し、国民に提案してその承認を得なければならない」として、改正提案要件を「3分の2」以上から「過半数」に緩和。さらに国民の承認については、現行憲法が国民投票の「その過半数」としているのに対し、自民党案は「有効投票の過半数」の賛成と条件を緩和している。

しかし、その後の動きは「加憲」を主張する与党・公明党が96条の先行改正に消極的なだけでなく、各種世論調査での96条先行改正に対する支持の低さから、自民党内にも慎重論がくすぶり、憲法改正の要件緩和議論は進展していない。

憲法改正