黒田東彦・日銀総裁プロフィール
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第2次安倍晋三内閣が2012年12月に誕生して以降、円安・株高が急速に進んでいる。こうした中で、日本銀行の新体制が誕生した。3月19日に退任した白川方明(まさあき)前総裁の後任として、アジア開発銀行(ADB)前総裁の黒田東彦(はるひこ)氏が20日付で新総裁に就任。同時に、岩田規久男・学習院大学教授と中曽宏・前日銀理事が副総裁に就任した。
財務省OB就任15年ぶり
日銀総裁人事は、衆参両院の同意を得て内閣が任命する。与野党間でさまざまな政治的な駆け引きもあったが、安倍晋三首相の最も強力な経済政策ブレーンある浜田宏一エール大学名誉教授らリフレ派の声に耳を傾け、黒田新総裁が誕生した。リフレ(リフレーション)政策とは、デフレ状態にある経済を正常に戻すために、適正なインフレ率への回帰を狙って行われる金融政策のことで、アベノミクスの推進力にもなっている。
財務省OBが日銀総裁に就任するのは、松下康雄総裁(1994年12月〜1998年3月)以来。日銀総裁ポストは、財務省の歴代事務次官経験者の中でも、実力や人望のみならず時の政権与党との関係や政治情勢にも恵まれる強運がなければ起用されるのは難しい。しかも、1998年の日銀法改正で中央銀行の独立性が重んじられて以降、財務省と日銀出身者が交互に総裁に就任する“たすき掛け人事”の慣習も廃止されている。このため、今回の総裁人事は、財務省で主税・国際金融畑を主として歩んだ黒田氏に白羽の矢が立ったことも異例だったといえる。
インフレ目標旗振り役で注目
政府と日銀が政策合意した「2年以内に物価上昇率2%達成」を実現させるためには、日銀総裁との安倍内閣との相性が重要である。この点、黒田氏は財務官時代にインフレ目標政策の旗振り役を務める異色の存在だった。加えて、財務官を退職後、一橋大学大学院経済学研究科教授などを経て、2005年2月からADB総裁を務めてきた。こうした経験がむしろ、国際決済銀行(BIS)会議の場などで各国中央銀行総裁と丁丁発止の交渉を展開するうえで生かされるのでは、と期待される。
政府・日銀がデフレ克服への積極策に取り組むことで、大胆な金融緩和や円安の進行による副作用を懸念する声もある。こうした副作用をもたらさずに、早期のデフレ脱却へ道筋をつけることができるかどうか。この論争はまだ続いている。総裁就任後、最初に注目されるのは日銀の金融政策決定会合である。ここで、日銀が採用してきた金融緩和策がさらに強化されるのかどうか。経済界や国内外の金融市場関係者らが注視している。