現代ニッポンの結婚事情

シリーズ・現代ニッポンの結婚事情:(2)婚活を効率化するマッチングサービス事情

社会

最近、結婚したカップルに「どこで知り合ったの?」と聞くと、「ネットで」という答えが返ってきて、よくよく話を聞いてみると、「マッチングアプリで出会った」という話になることがある。それはどんなサービスで、どのように出会い、結婚に至るのか。業界最大手の恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」について、運営会社と利用者に話を聞いた。

「理想の人を探すのは無理」と言われ

2014年6月に知り合い、7月に交際スタート、15年7月に結婚したカップル。夫のAさんは現在31歳、妻のBさんは8歳上の39歳。1歳半の子どもがいる。  「ネット広告を見て遊び半分で始めた」というAさんは、20人ほどの女性とメッセージをやりとりし、5人以上と実際に会った。

気になる相手に“いいね”を押すと、1日以内に返事が来て、Pairsのメッセージ機能でメールを5往復くらい、そこからLINEに移行し、3日ほどで「会いましょう」となるという。午前と午後に違う異性と会う約束を入れる人もいるそうだが、相手を探している状況は“お互い様”なので、それをオープンにしたところでこじれるようなこともないという。

Bさんは「女性ばかりの職場で出会いがなかった。『やさしくて、誠実で、男らしくて、行動力があって、音楽が好きで、楽器ができて、旅行が好きで、英語ができる人がいい』と友人に理想を明かしたら、『そんな人を探すのは無理』と言われてしまって…。一生結婚できないかもしれないと思っていたところ、職場の真面目そうな先輩がネットで知り合った人と結婚しました。そこで私も、『Omiai』と『Pairs』に登録しました」と話す。そして理想通りのAさんに出会った。

両方のサービスを並行して使い、計3人に会ったそうだが、怖い思いをしたことはないか問うと、「プロフィールに『独身』と書いてあったのに、過去のブログを見たらバツイチという人がいた」という。もっともこれはネットに限らず、合コンや職場で出会おうが起こりうるトラブルだろう。

「自分が結婚できたので、『すごくいいよ』と友だちに勧めたら、そのうち2人はPairsで結婚しました。もう1人も結婚予定です」とAさん。難点は両親に知り合った経緯を伝えにくく、あいまいにごまかしているという点くらいのようだ。

(エウレカ提供)

気が合わなかったらあっさり「次に」

「女性が多い職場。だからこそネットを利用した」と語るのは夫のCさん、31歳。  「職場恋愛は面倒が多い。だから職場と関係ないところで出会いがほしかった。それで街コン、合コンにも参加したけれど、一度に会える人数が限られている上に、友人主催の合コンでは何かと気を使ってしまう。でもPairsは登録者も多いし、コミュニティがあるので相手を効率的に絞り込める。同じ趣味の人を探すだけでなく、逆に『高身長が好き』といったコミュニティに入っている女性は自分に合わないから除外できるんです」

Cさんの場合、LINE交換は30〜40人で実際に会ったのは15〜20人。うち3人と交際した。その1人が妻のDさん、30歳だ。Dさんは、夫とは逆に「出会いがない職場だった」と振り返る。

「合コン、街コンなどの婚活を1年くらい続けたけれど成果が出ず、20代で結婚したかったので時間を無駄にしたくなかった。マッチングサービスは最初は怖い印象があったけれど、友だちが使っていたので婚活のツールの一つというつもりで始めました」

Dさんは、17年1月に登録。Cさんの前に1人と会ったが、その人は結婚は考えていないということで、すぐに連絡を取るのをやめた。そして2月にCさんと初めて会い、3回目のデートで交際スタート。Pairsを使ったのは正味2カ月ほどだった。

「短期集中型ですね。彼に対しては私から“いいね”を押しました。かわいく撮れている自分の写真をアップすれば“いいね”がたくさん来るだろうなとは思ったけれど、それで実際に会って『写真と違う』となったら困るし、あまりたくさん“いいね”が来ても選びきれないので。でも、すぐに『会いたい』とメッセージを送る男性は、危険なので会いません。夫とは1カ月間くらい文章でのやりとりを重ねて誠実さをチェックしました」

無駄な手間は省略、しかし、重要な点は納得のいくまで時間をかける。2人は交際をスタートした約1カ月後の4月に結婚を前提に同棲を始め、互いの親に「婚活で知り合った」とあいまいに説明しつつ紹介。7月にプロポーズ、18年1月に入籍した。前述のカップル同様、やはり出会いから1年程度のスピード結婚だ。互いに最初から「結婚」という目的がはっきりしているので、トントン拍子に話が進む。

「私は合コンで周りが盛り上がっていると冷めてしまうタイプなので、合コンで彼と出会っていたら、たぶん興味を持たれなかったと思います。その点、Pairsは1対1で自分をアピールできる。気が合わない人だったら既読スルーして連絡を断つことができる点も気楽です。いままで全く関係のない人だったわけですから、仮に自分が既読スルーされたとしても落ち込むことなく、『次に行こう』となります」と妻Dさん。

本来なら出会わなかったはずの2人が結ばれる。彼らにとって現代の縁結びの神様は、マッチングアプリかもしれない。ただし、誰もがこのサービスで相手を見つけられたわけではない。彼らの周りでもこのサービスが合わず、別のサービスに移行したり、結婚相談所に切り替えたりした人もいたという。この現代の縁結びの神様に縁を結んでもらうには、ネットリテラシー、多くの人と同時にやり取りするマメさとコミュニケーション能力、そして自分で結婚相手を選ぶという意志などが必要だろう。

取材・文=安楽 由紀子
企画・編集=POWER NEWS編集部

バナー写真:(Fast&Slow/PIXTA)

この記事につけられたキーワード

結婚 家族・家庭

このシリーズの他の記事