福島、元気です!

「福島」を自分の目で確かめ、新たな発見をしたい——「福島、元気?」企画者・陳昱築さん

社会

野嶋 剛 【Profile】

2017年11月、台湾で若者を中心企画展示された「福島、元気?」について、プロジェクト企画者で、Impact Hub Taipei社会影響力製造所代表の陳昱築さんに話を聞いた。

陳昱築 Rich CHEN

Impact Hub Taipei社会影響力製造所の創設者兼執行長。CreativeMornings Taipeiなどの共同MCでもある。大学では日本語と国際関係の2つの学位を取得。Impact Hub Taipeiを創設する以前、メドトロニック社でセールスマネージャーとして3年間従事。物事を思考するのが好きで、それを実際に生み出し、新しいものや変化を求めて持続可能な発展を目指す。また、自分の情熱で社会の多くの人々に影響を与えたいと望んでいる。

「福島」を自分の目で確かめ、客観的に語りたい

野嶋  「福島、元気?」の反響はかなり良かったようですね。

陳昱築さん  われわれもびっくりしています。日本人の方が多く駆けつけてくれて、涙を流して見てくれて、われわれに「ありがとう」と何度もお礼を言いながら帰る方々が多かったことには、二重に驚きました。これは本当に予想していませんでした。日本のメディアも、NHKも含めて、多くのメディアが取り上げてくれました。

野嶋  展示会はどのぐらいの観客動員でしたか?

陳さん  展示会は11月24日から始まり、その日は午後だけで1400人が集まりました。その次の日曜日の26日は、4000人が来てくれました。合計で1万3000人です。華山1914文創園区という場所も良かったのでしょう。ネットで盛んに宣伝して、日本に興味がある人、日本に行ったことがある人、福島に関心がある人が集まってくれたのだと思います。

アンケートへの反響も9割ぐらいは良いものでした。「本当の福島の状況が分かった」「福島を自分の問題として考えることができた」などの声がアンケートで寄せられました。もちろんマイナスの意見もありました。「日本政府のためにやっているのか」とか「食品の輸入を進めようとするのか」といった意見ですが、ごく少数でした。

野嶋  なぜ、このプロジェクトを立ち上げようと考えましたか?

陳さん  私は、台湾大学で日本語を学んだのですが、当時は台日学生交流会議を立ち上げて、日本の学生たちと交流していました。しかし、大学を卒業した後はしばらく日本との交流を離れていました。最近、自分で独立して起業したので、自分でも何かもう一度、台日交流について何かやってみたいと考えたのです。

台湾ではとにかく福島に対して、マイナスの報道が多く、情報が偏っているため、福島そのものに対する恐れや不安がとても強くなっていました。しかし、メディアですら、あまり実際に福島に出掛けて実情を伝えていませんでした。私たちは自分の目で確かめてみて、客観的に語ってみたいと思ったのです。できるだけ中立な形で「福島」を考えてもらうことを心掛けました。

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野嶋 剛NOJIMA Tsuyoshi経歴・執筆一覧を見る

ジャーナリスト。大東文化大学教授。1968年生まれ。上智大学新聞学科卒。在学中に、香港中文大学、台湾師範大学に留学する。92年、朝日新聞社入社。入社後は、中国アモイ大学に留学。シンガポール支局長、台北支局長、国際編集部次長などを歴任。「朝日新聞中文網」立ち上げ人兼元編集長。2016年4月からフリーに。現代中華圏に関する政治や文化に関する報道だけでなく、歴史問題での徹底した取材で知られる。著書に『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『故宮物語』(勉誠出版)、『台湾はなぜ新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)『香港とは何か』(ちくま新書)『蒋介石を救った帝国軍人 台湾軍事顧問団・白団の真相』(ちくま文庫)『新中国論 台湾・香港と習近平体制』(平凡社新書)など。オフィシャルウェブサイト:野嶋 剛

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