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北朝鮮工作船を一般公開:海上保安資料館(横浜)

文化

横浜市にある海上保安資料館横浜館は、北朝鮮の工作船と海上保安庁の巡視船が東シナ海で交戦した「九州南西海域工作船事件」(2001年12月)に関する回収物などを展示・保管している。

同館は2004年12月10日に開館。観光スポットの赤レンガ倉庫からほど近い横浜海上防災基地内にあり、事件で自爆、沈没した不審船のほか、船内で見つかった携帯電話などの通信機器、機関銃や鉄かぶとなどの回収物約1000点が展示されている。

交戦後に自爆した工作船

事件は2001年12月22日、海上保安庁が九州南西海域航行する不審船情報を入手し、巡視船と航空機で追尾したことから始まった。不審船は停船命令を無視して8時間以上も逃走を続け、巡視船の威嚇射撃に対しては自動小銃やロケットランチャーで反撃した。

このため、海保の巡視船も不審船に向けて射撃を実施。不審船は自爆と思われる爆発を起こして沈没した。翌日に発見された乗組員の遺体の状況などから不審船は北朝鮮の工作船だと見られていたが、それが確認されたのは、船体を海底から引き揚げた02年9月のことだった。

工作船の前で公開されている、追跡時の映像

回収物には金日成バッジも

船体とともに、海底や船内から数百点もの品々が回収された。船体を見ると、至るところにハングルの文字が確認されたほか、自動小銃や軽機関銃、ロケットランチャーは鑑定の結果、北朝鮮製と推定された。金日成・元北朝鮮国家主席が描かれたバッジも見つかった。

工作船引き揚げで回収された日本製の携帯電話と英・ハングル辞典

鉄かぶととソ連製B-10無反動砲の部品。

沈没船から回収された武器

船に取り付けられていた自爆用スイッチ

回収された金日成バッジ(手前は拡大した写真。拡大鏡の真下にあるのが実物)

多数の弾痕残る船体

展示の目玉は、全長29.7メートルの工作船「長漁3705」だ。沈没して長期間水中にあったためさびついており、多数の弾痕も残っている。船体上部は銃撃戦で大きな損傷を受け、操舵(そうだ)室やマストが破壊されているのが分かる。甲板には口径14.5ミリの二連装対空機関銃を出し入れするレールがあり、機関銃の設置場所はブリッジの背後に隠されている。

船小型工作船(左)とゴムボート(右)

船尾の扉から見た小型工作船の格納スペース

船首付近の左舷に残る弾痕

同館はこのほか、海上保安庁の日々の活動、訓練などについても展示・紹介している。

海上保安資料館横浜館

  • 所在地:〒230-0001 神奈川県横浜市中区新港1-2-1 横浜海上防災基地
  • 公開時間:午前10時から午後5時まで
  • 休館日:毎週月曜日(月曜日が休日の場合は翌平日)、年末年始
  • 見学料:無料
  • アクセス: JR京浜東北・根岸線、横浜市営地下鉄「桜木町駅」より徒歩17分 。横浜高速鉄道みなとみらい線「馬車道駅」、「日本大通り駅」より徒歩8分
  • 電話:045-662-1185
  • ホームページ: http://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/kouhou/jcgm_yokohama/index.html

原文=英語、写真撮影:土井 恵美子(nippon.com編集部)

バナー写真:海上保安資料館横浜館に展示されている北朝鮮の工作船「長漁3705」

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