普段はなかなか出会えない生き物たちのオンパレード:目黒寄生虫館
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人に身近な寄生虫
「小さくて魅力的」-目黒寄生虫館とその展示物には多くの共通点がある。
寄生虫とはある生物を宿主(しゅくしゅ)として体内や皮膚に住み着く。そんな寄生虫に興味がある人にはぜひお勧めのスポットだ。ただし全ての人が楽しめるとは限らないし、中には気味が悪いと思う人もいるだろう。でも多くの発見に出会うことは請け合いだ。
寄生虫を専門に扱う博物館は世界でも珍しい。入館者数は年間約5万人。同館は、寄生虫を怖がらないで、人間と同じ生き物として受け入れてほしいと思っている。一歩中に入ると、ヒトや他の生物に感染する寄生虫のホルマリン標本瓶がずらりと並び、その多くはグロテスクに見えるかもしれない。
特に珍しいのが、「生きた化石」と呼ばれるシーラカンスの体内から発見された寄生虫だ。他にも動物の組織に侵入する寄生虫や、バンクロフト糸状虫のように人体の変形を引き起こす寄生虫もあり、実際の症状を説明した写真も展示されている。
ギョッとするがためになる
1階の展示室では、自然界に存在する多種多様な寄生虫やそのライフサイクルが詳しく説明されている。2階は人間に感染する寄生虫がテーマ。例えば、人に感染する寄生虫は200種類以上あるが、ヒト固有の寄生虫はそのうちのわずか10%で、それ以外は「人獣共通寄生虫」、つまり感染した鳥や動物を介して人間に感染する。このことをどれだけの人が知っているだろうか。
何といっても目黒寄生虫館の目玉展示物は、全長8.8mの日本海裂頭条虫(にほんかいれっとうじょうちゅう:サナダムシ)だ。40歳の男性が寄生虫に感染したマスを食べ、その小腸から排出されたもの。小さな寄生虫がわずか3カ月でこれほどの大きさに成長したというのはまさに驚きである。
他には住血吸虫(じゅうけつきゅうちゅう)など、もっと小さな寄生虫なども多数展示されている。寄生虫ワールドに関するさまざまな研究資料や出版物がそろえられ、標本庫や文献室には標本約6万点、寄生虫に関する学術論文約5万本と図書約5,000冊が所蔵されている。
同館ではさまざまな寄生虫学者による画期的な研究成果も紹介され、特に有名な山口左仲(1894–1976)に関しては常設展示室が設けられている。山口博士は日本の野生動物に感染する寄生虫や寄生性甲殻類を専門に研究し、展示品には同博士の論文や研究資料、実際に使用したプレパラート標本(顕微鏡観察用の標本)などが含まれている。
創立目的は人々への啓発
1953年、亀谷了(かめがいさとる)は当時日本にまん延していた寄生虫の危険性を人々へ伝えるために目黒寄生虫館を創設した。幸い、今の日本では寄生虫に感染することはほとんどなくなったが、世界には寄生虫がまん延している国がまだ多くある。
目黒寄生虫館は非営利研究機関で、現在も寄生虫に関する研究や新たな標本・展示物の収集に力を入れている。
ぜひ立ち寄ってほしいのが2階のミュージアムショップだ。寄生虫が描かれた一見ドキッとするデザインのTシャツや、本物の寄生虫が入った携帯ストラップなど、とっておきのお土産がある。さらに販売されているガイドブックを読みながら見学すれば、寄生虫についてより深く学ぶことができるだろう。
目黒寄生虫館
- 住所:153-0064東京都目黒区下目黒4-1-1
- Tel.:03-3716-1264(音声案内、日本語のみ)
- ホームページ: http://www.kiseichu.org/
- 開館時間:午前10時~午後5時
- 開館日:水曜日~日曜日
- (月曜日・火曜日が祝日の場合は閉館し、直近の平日に休館。年末年始休館)
- 入館料:無料(ご寄付にご協力ください)
バナー写真:館内2階には、寄生虫のライフサイクルを説明した展示パネルや標本と共に全長8・8メートルの条虫「日本海裂頭条虫(学名:Diphyllobothrium nihonkaiense)」が展示されている。
原文英語、写真協力=目黒寄生虫館