日本のヤクザは今

福岡金塊事件の闇:海外マフィアが暴利むさぼる密輸ビジネス

社会

日本が金塊密輸ビジネスの温床になっている。福岡・博多で7億5800万円相当の金塊が盗まれた事件で2017年5月に逮捕されたのは、いわゆる「半グレ」と呼ばれる不良グループを中心とした10人だった。事前に金塊の取引情報を入手した彼らは、警官の職務質問を装って被害男性らを足止めし、白昼堂々と強奪を成功させた。極秘であるはずの取引情報はいったいどこからもたらされたのか。頻発する金塊事件を追うと、日本への金塊密輸を繰り返す海外マフィアの存在が浮かび上がってきた。

香港から韓国経由で日本へ

金塊の密輸事件は、消費税が5%から8%に引き上げられた2014年4月以降に急増した。消費税が10%になったら、さらに“おいしい仕事”になるのは間違いない。事件をきっかけに浮かび上がった金塊密輸ルートは、こんな流れだ。

①金塊の持ち出し規制がない香港で金塊を買い付け、韓国に向けて出国する。

②経由地の韓国・仁川(インチョン)国際空港のトランジットエリアで複数の「運び屋」に金塊を小分けにして持たせ、日本の税関で申告せずに密輸する。

③日本国内の業者に消費税8%分を上乗せした価格で売る。

④売った現金を持って香港に戻る。

元手の金塊が1億円分ならば、もうけは800万円。さらにこの1億800万円を元手にすれば1億1664万円に。これを繰り返せば、雪だるま式にもうけが膨れ上がる。もちろん渡航費用や手数料などはかかるが、多くの密輸業者が週に何回も取引し、1カ月もあれば元手は倍になる。

「運び屋」摘発相次ぐも…

冒頭の2つの事件以外にも、金塊に絡んだ事件の摘発は相次いでいる。2017年3月には福岡空港で、大阪市職員ら2人が韓国から金塊計6キロ(約2700万円相当)を密輸しようとしたとして逮捕された。パチンコ仲間から頼まれてバイト感覚で繰り返していたという。

4月の天神の事件の直後には、やはり福岡空港で韓国人4人が現金約4億3500万円を税関に無申告で香港に持ち出そうとしていたのが発覚し、逮捕された。福岡県警は、4人はいずれも韓国を拠点とする大規模な金塊密輸組織のメンバーで、現金は韓国から日本に密輸した金塊を換金したものとみている。捜査の過程では、1日で30人もの「運び屋」が仁川空港から複数の航空機で福岡に向かい、金塊計150キロ超を持ち込んだことも判明している。

また同時期には、東京・銀座の路上で金塊を換金した直後の現金約7200万円が入ったバッグが奪われる事件が起きている。

韓国からの金塊密輸未遂事件で、押収された金塊と偽装に使われた化粧品ケース=2017年6月15日、千葉・成田空港(時事)

5月には「海上ルート」の存在も浮き彫りになった。佐賀県唐津市の漁港に接岸したイカ釣り漁船から206キロもの金塊が見つかり、中国人を含む密輸グループが摘発されたのだ。

これらは、あくまでも表面化した事件である。金塊取引を狙った強奪事件は、密輸品が絡むだけに被害者が通報できず、泣き寝入りしているケースが多いと言われる。

忘れてはならないのは、こうして本来、国に納められるべき消費税がかすめ取られ、闇社会に巨額のカネが流れているという事実である。

取材・文:パワーニュース編集部

バナー写真:福岡市の繁華街、天神の中心部で現金約3億8000万円が奪われた現場付近を調べる捜査官ら=2017年4月20日(時事)

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