ムスリムの現実 in JAPAN〜「IS」が生んだ誤解の中で

(5)ムスリムと結婚して改宗した日本人女性たち

社会

イスラム教は女性の人権を制限している、との主張がある。日本でも、特に過激派組織イスラム国(IS)の台頭以降、女性への暴力や迫害など印象を悪くするニュースばかりが目に付く。そんな日本でムスリムの男性を愛し、結婚・改宗した日本人女性たちがいる。彼女たちはどのような暮らしをしているのか。3人にそれぞれの事情と思いを聞いた。

誤解が多いから怖いだけ

この3人の女性たちの生活は、日本に伝えられるステレオタイプなムスリム女性のイメージとは違い、確かな自由がある。なにより夫や子どもと幸せな生活を送っている。これはイスラム教が根付いていない日本だから、たまたま許されているのか。

前出のマリ・ハディージャさんが働く「NPO法人 日本ハラール協会」のレモン史視(ひとみ)理事長は、「イスラム教を知らないまま、『怖い』『厳しい』というイメージを持たれていると悲しくなります」と言う。レモンさんは27歳の時に自らイスラム教に改宗し、ムスリムの夫と結婚した。外出時はヒジャブを付けている。

「イスラム教は女性をしいたげる宗教、などということは決してありません。例えば、預言者ムハンマドは積極的に家事を行っていましたし、『天国は母の足の下にある』とも仰っています」

自分と神との契約なので、神との関係をどうしたいかは自分に委ねられている。レモンさん自身も毎朝の礼拝に夫と起こし合うが、たまに起きられないこともあるという。人間だから、そうそう完ぺきにはいかない。だから、努力を続けるのだ。

「報道などでイスラム教の厳しいルールや暴力的な行為に焦点があてられがちですが、ルール以前に重要なのが信仰です。イスラム教はとても優しく寛容な教えであり、暴力的な教えはありません。それは神の存在を味わえば自ずと理解できる、神の愛からなる教えです」

現在、日本には外国人労働者が増え、政府は訪日外国人の拡大を図っている。必然として、日本で暮らすムスリムや、ムスリムと結婚して改宗する日本人とその子どもたちが増えていくだろう。

「イスラム教についての誤解が多いから怖いだけなのだと思います。これから日本に増えるムスリムやその子どもたちが暮らしやすい社会を作るために、日本の社会と共存するために、理解を広めていきたいと思っています」

文=國府田 英之(POWER NEWS)
写真=伊ケ崎 忍(東京)、山内 浩(大阪)

バナー写真:取材中、ずっと腕を組み仲が良いゲルズ・ムハメット・アリさん(左)と妻の高瀬ゲルズ愉理さん=東京都中野区

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