ムスリムの現実 in JAPAN〜「IS」が生んだ誤解の中で

(5)ムスリムと結婚して改宗した日本人女性たち

社会

イスラム教は女性の人権を制限している、との主張がある。日本でも、特に過激派組織イスラム国(IS)の台頭以降、女性への暴力や迫害など印象を悪くするニュースばかりが目に付く。そんな日本でムスリムの男性を愛し、結婚・改宗した日本人女性たちがいる。彼女たちはどのような暮らしをしているのか。3人にそれぞれの事情と思いを聞いた。

年下の夫を支える44歳女性の決意(大阪)

大阪――。平野区にある「NPO法人 日本ハラール協会」の扉を開けると、ヒジャブ姿の女性の隣で、長い髪を束ねた女性が電話応対に追われていた。事務員のマリ・ハディージャさん(44)だ。20歳近く年下のインドネシア人、アブドゥル・ラフマンさんと2014年の正月に結婚した。

「急に頑張らなくてもいいよ」 夫の優しさ

マリ・ハディージャさん。改宗して「自分自身が落ち着いた」と話す

「改宗ってそんなに大げさなことではなくて、普通に生きてきた人に信じるものが一つできたというだけのことです。ただそのおかげで、自分自身がとても落ち着きました。自分の中でごちゃごちゃと悩んでいたことを、神様の思し召しと思えるようになりました」

旅先のインドネシアのホテルで働いていたラフマンさんと出会ったのは12年の夏。改宗について、ラフマンさんから言われたのは一つだけだ。「信じるものはアッラーだけ」

改宗に不安がなかったわけではないが、心を楽にしてくれたのはラフマンさんの言葉だ。ラフマンさんの出身地の村を訪れた際、宗教的なしきたりについての立ち居振る舞いが分からないマリさんに、こう声をかけた。「そんなに急に頑張らなくていいよ」

結婚してすぐ、初めて水色のヒジャブをかぶった時もこう笑われた。「似合わないからかぶらなくていいよ」

夫が歩調を合わせてくれたからこそ、日本でもムスリムが普通に生きられる社会を願う。来日したころ、ISのニュースを見たラフマンさんが、悲しそうな顔でつぶやいた。「これがイスラム教だと思われたらどうしよう」

「夫もそうですが、本来、ムスリムは人を許す人たちだと感じています。だからもし日本で、ISとムスリムを同じだと見るような人と出会ったら、それは違うって言おうと決めました」

改宗して3年半、夫から「ヒジャブが似合うね」

日本ハラール協会理事長のレモン史視さん(左)とマリさん。女性がヒジャブを付けるかは、国や地域によって大きく違うのだという

夫は仕事先で、「日本に来たら宗教なんて関係ない」と言われたことがあるという。単に理解がないのかもしれないし、逆にそう考えないとイスラム教に理解の浅い日本では生きていけない、ということを伝えようとしてくれたのかとも思う。特に食事は大変だ。食べられない食事を勧められて「おなかが痛い」などとその場をやり過ごすこともあるが、好意を断るのも気疲れする。コンビニでも、そもそも原材料の表示が読めない。

「夫も、日本の生活になじむべく割り切ろうとしている一方で、罪だとは感じています。私ができるのは、私と一緒にいる時間は、あえて罪を作らせないということです。食べていいのか分からないけどまあいいや、ということは絶対にしません」

最近、夫から「ヒジャブが似合うね」と言われるようになったという。改宗して3年半。ムスリムとしての自分を見る夫の心境に変化があったのかな、そんなことを感じている。

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