
コーリーと椋の新たな門出
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コーリー・プロコピオさんと椋(りょう)さんが初めて会ったのは2015年6月。それから1年もたたないうちに結婚、息子誕生というスピーディーな展開で、16年秋からカナダのトロントで親子3人の新たな生活が始まった。
最初はほとんど「無視」
トロントでの運命の出会いは、ワーキングホリデーで美容師として働いていた椋さんの以前のシェアハウス仲間がコーリーさんの知り合いだったことがきっかけ。「久しぶりにその友達と会うことにしたら、知らない外人が一緒にいた」と言う椋さんは、最初、特にときめかなかったらしい。一方、コーリーさんは「美しい彼女に一目ぼれ」。椋さんにはほとんど無視されたが、単に“shy”(恥ずかしがりや)だと思っていた。ところが、付き合いだしてから間もなく、唐突に “Are you gay?” (ゲイですか?)と聞かれてびっくり。「トロントではそんな個人的なことは聞かないから、日本との文化の違いかと思った」
椋さんによれば、前に付き合っていたボーイフレンドが、別れてからゲイだったと判明したので、「念のため、はっきりさせておきたかった」とのこと。デートを重ねるうちに、椋さんも、優しくて、多少の言葉の壁をものともしない理解力のある彼に急速に引かれていった。
“デキちゃった婚”先輩の母に報告
2人の「国際結婚」を、当初、家族はどう受け止めたのだろうか。
「僕の両親はとても喜んでくれた。それまで、仕事一筋だったし、リョウが初めての恋人だったから」とコーリーさん。彼には3人の弟と2人の妹がいるが、「妹2人は最初リョウを気に入らなかったみたいだけど…。ちょっと嫉妬もしていたかもしれない」
トロント育ちで、カナダ国内と米国以外は旅行もしたことがなかったというコーリーさんだが、日本とは縁がある。母親は日系2世で、親類のいる滋賀県彦根市を何度か訪れているそうだ。父親はカナダで永住権を取得したイタリア人。
「以前、韓国人の女性と結婚した友人から、僕の子ども時代はどうだったか聞かれた。彼は “白人” だから、子どもが生まれれば “mixed child” になるわけだけど、子育てに少し不安があったらしい。でも、トロントでは中国人、韓国人、日本人、黒人とさまざまな文化的背景を持った人たちが生活して英語で意志疎通をしている。“ミックス”とか“ハーフ”とかって、全然問題じゃない。日本では違うのかもしれないけど」
椋さんがコーリーさんと結婚すると日本にいる母親にLINEで報告したのは、赤ちゃんができたと分かった11月頃。「あ、そうなんだ、良かったね…という感じ」だったそうだ。「私の母も“デキちゃった婚”だったし」と椋さんはけろりと言う。
大輔君はカナダで市民権を取得。コーリーさんは、男の子が3人欲しいと言うが、椋さんは女の子が欲しいそうだ
トロントと東京、どちらに住むか
9月に椋さんの実家で2人を取材した際には、コーリーさんは育児休暇中で、6月に生まれた息子、大輔君と椋さんとの親密な時間を楽しんでいた。今のところ、おむつの交換も含め、育児も家事も2人で “half and half” でこなしているそうだ。「今は3時間ごとにお乳をあげているけれど、彼も夜中、私と一緒に起きてくれる」と椋さん。
カナダで暮らすことにしたのは、コーリーさんの今の仕事が待遇面、福利厚生面で理想的だからだ。オンタリオ州の労災保険を扱う組織で勤務は8時半から4時半、残業はほとんどない。
「お金が欲しければ残業するけれど、今はその必要はない。日本では残業は普通みたいですね。でもカナダはもっとゆったりしています」
東京の椋さんの家族と一緒に。加藤家の「家訓」は学校を出たら2年以内に家を出て独立すること。弟(左端)もすでに独立している。父(左から2人目)は整体師、母(右端)は看護師。2人とも北海道出身だ
椋さんの出産に立ち会うため、4週間有休を取り、育休は15週間申請した。ほぼ5カ月間仕事を休み、10月末に職場に復帰。育休中は、会社から給与の75%が支給される。「日本で住むこともリョウと相談したけど、僕がトロントでの仕事よりいい仕事を見つけるのは難しい」
一方椋さんは、「カナダに住むことをオーケーはしたけど、いつか日本に帰ってきてもいいんじゃないかとは思っている。トロントはいい所だけど、東京の方が清潔だし、シャワーの出具合もいいし…。ずっと日本育ちだから、東京での生活の方が楽」
コーリーさんは、将来椋さんがどうしても日本で暮らしたいと思うのなら、「真剣に検討する」と言う。「日本で英語を教えて生計を立てるEnglish speakersも多いから、僕も最初はそうしてもいい。でも、給料のいい安定した仕事に就くためには、もっと日本語を勉強する必要がある」