ハッピーアワー(2017年4月)
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作品情報
監督=濱口 竜介
キャスト=田中 幸恵、菊池 葉月、三原 麻衣子、川村 りら、他
脚本=濱口 竜介、野原 位、高橋 知由
製作総指揮=原田 将、徳山 勝巳
プロデューサー=高田 聡、岡本 英之
撮影=北川 喜雄
音楽=阿部 海太郎
製作・配給=神戸ワークショップシネマプロジェクト
製作年=2015年
製作国=日本
上映時間=317分
公開日=2015年12月12日
受賞
第68回ロカルノ国際映画祭(スイス) 最優秀女優賞、脚本スペシャル・メンション
第37回ナント三大陸映画祭(フランス) コンペティション部門 銀の気球賞、観客賞
第26回シンガポール国際映画祭 アジア長編映画コンペティション部門 最優秀監督賞
第19回グァナファト国際映画祭(メキシコ) 最優秀作品賞
第6回バルセロナ・オトゥール国際映画祭(スペイン) 観客賞
第11回KINOTAYO現代日本映画祭(フランス) 金の太陽賞(グランプリ)
公式サイト=http://hh.fictive.jp/
フェイスブック=https://www.facebook.com/Film.HappyHour
2017年4月22日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて凱旋上映
見どころ
この作品が最初に注目を浴びたのは1年8カ月も前の2015年8月。演技経験のない日本人女性4人がスイスのロカルノ映画祭で最優秀女優賞を受賞したという一報だった。『ハッピーアワー』はその後もヨーロッパ、アジア、オセアニア、北米、南米と世界30以上の映画祭で上映され、数々の賞を受賞し、2017年に入ってもその勢いは止まっていない。
日本でも全国各地で上映されてきたが、その数は決して多いとはいえず、世界的な快進撃の割には話題になっていない印象がある。やはり5時間17分という「長尺」ゆえだろう。この上映時間もまた、出演者全員が演技未経験ということと並んで、この作品の「気になる」ところなのだ。
「気になる」は、「何だか見てみたい」という興味にもなれば、反対に、映画館に足を運ぶのをためらわせる不安ともなろう。あるいは、見ている最中に「気になる」のであれば、ネガティブな反応ということになる。
しかし多くの評者が、5時間17分を長いと感じなかったと言い切っている。むしろ、その「幸福な時間」をぜひとも共有すべきだと強く勧めてくる。
そしてもう一つ「気になる」演技については、ロカルノの審査員がなぜ彼女たちを選んだのか、考えるだけでも意味がある。少なくとも、これまで私たちがスクリーンに見てきた役者たちの「達者な」演技が、実はほとんど自然でなかったことに、あらためて気づかされるだろう。
『ハッピーアワー』に出てくる人びとは、感情を高ぶらせて泣き叫んだりはしない。普段の私たちが、人前ではなるべくそうしないでいるように。彼女たちは、普段の私たちと同じくらいぎこちなく、相手の気持ちを探り、言葉を探し、核心を迂回しながら、とぎれとぎれに話をする。そのうちに疲弊してしまい、決してお互いが分かり合うことはない。
だからといって、見終わって寒々とした感じが残る映画ではなかった。「人生は続く」。そんな言葉がしっくりときそうだ。女性たちは若さを失い、愛を失いながらも、新しい道へと前を向いて歩き出している。途方に暮れている男たちを置き去りにして、彼女たちは決して立ち止まらないのだ。
文=松本 卓也(ニッポンドットコム多言語部)
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バナー写真:©2015 神戸ワークショップシネマプロジェクト