日本のエスニックタウン

拡散する新チャイナタウンの実態

社会

池袋だけではなく、都心周辺には次々と「チャイナタウン」が形成されつつある。

料理と並ぶキーワードは「教育」

中華料理と並ぶ中華民族のもう一つのキーワードは教育だ。伝統的に教育熱心で知られる華僑・華人の集積を語るときにこの教育問題は見逃せない。

中国系住民のベッドタウンとしては池袋からJR埼京線・京浜東北線に乗って北に30分ほど行くと1990年代から「新華僑団地」として知られるUR川口芝園団地(蕨駅徒歩7分)がある。ここではかつて2400世帯のうち3分の1が新華僑世帯とも言われ、公民館や集会場では中国人向けの行事が盛んに開催された。近年は川口の高層マンションを購入し転出した中国系住民も多いというが、面倒な保証人も要らず敷金・礼金なども不要なUR団地は外国人にも借りやすいため今でも留学生や初めて日本にやってきた若い中国人ビジネスマンなどが移り住んでくるという。

川口芝園団地には池袋からスタートした中国語補習学校である同源中文学校(東京都豊島区)が開校している。週末になると、「子供たちに中国語を忘れさせたくない」と願う中国人の親たちが大宮など遠隔地からも子供たちを通わせているという。

首都圏で大陸系の中国人子女向け学校としては横浜山手の中華学校があるのみ(台湾系は2校あり)。しかも急増する中国系住民に定員枠が対応しきれないため、今年20周年を迎えるこの中国語補習学校は東の千葉市稲毛区から、北は越谷市まで、さらに西では名古屋市まで9ヶ所に広がっており、生徒数は計800人を超える。その所在地周辺には相応の中国系住民が家族で居住していることになる。

不動産をめぐる気になる報道

本稿では従来型のチャイナタウンにつながる中国系住民の集積について見てきたが、今年になって中国人の爆買いを背景としてささやかれ始めた気になる話がある。

「東京都心部で建設中の大型タワーマンションでは中国人への販売が半分を超えた。日本人の購入者がキャンセルするのではないかとのうわさが絶えない」「城東地区にある分譲住宅地では中国人コミュニティーができあがってしまったことから、『居住ルールを守らない』『うるさい』と、日本人居住者との関係は一触即発だ」(ともに産経ニュース2015年4月20日)

具体名を伏せていることなどから慎重な確認が必要だが、事実とすれば中国の経済力を背景とした新たな居住地形成ともいえる動きである。

カバー写真=有中国人店員——「中国人の店員います」という看板を掲げる都内の携帯電話店

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