日本のエスニックタウン

拡散する新チャイナタウンの実態

社会

池袋だけではなく、都心周辺には次々と「チャイナタウン」が形成されつつある。

首都圏に集中する中国系住民

首都圏では近年、伝統的なチャイナタウンである新宿、池袋から東と北に向けて中国系住民の増加がみられる。

2014年末現在、永住者、留学生を含む在留外国人統計(法務省)によると、都道府県別では首都圏の4都県(東京、神奈川、埼玉、千葉)だけで全国の半数に迫る31万3984人(48%)の中国人が居住している。首都圏への集中は経済的に考えると自然な現象だが、中国人の場合、その集積の度合いは外国人全体(約40%)を大きく上回っている。

これまで漠然と関西には中国人が多いと思われていたが、実際に統計でみると、大阪府の在留中国人の数(5万1121人)はすでに神奈川(5万5942人)、埼玉(5万2495人)の両県に追い抜かれてしまっている。

試みに都内についてインターネットのグルメサイトで「中華料理」を地域検索すると、池袋エリアの287店に対して「両国・錦糸町」エリアが201店と渋谷エリア(183店)を上回る規模に達していることが分かり驚かされる。

一般に中国人が住みたい街の条件としては、①交通の便がいい、②物価・地価が安い、③勤め先、友人の住まいが近い-が挙げられるが、もう一つ池袋チャイナタウン形成を促進したのが故郷の料理を出す中華レストランだった。老華僑に聞いてみると、錦糸町には20年前からこうした条件が形作られていた。その後、地価の高い池袋や新宿を追うように両国・錦糸町エリアなど新しいチャイナタウンで中華料理店などの集積が進んでいたのだ。

東京都の統計(2015年4月末現在)によると、都内では新宿、豊島、江戸川、江東、板橋の5区がそれぞれ1万人以上の中国系住民を抱える。この中で歌舞伎町・大久保の新宿区、池袋の豊島区と並ぶ大きな存在が江戸川、江東の両区だ。両区に墨田、葛飾を加えたいわゆる葛西地域4区には計3万6000人以上が居住し、東京東部から千葉県側に伸びるJR総武線、東京メトロ東西線沿線を中心に一大チャイナベルトを築いている。

日本人の目にやや不思議に映るのが、あまりおしゃれとは思えないこうした下町地区に若い中国女性らも好んで住まう点だ。日本への留学後に港区六本木の企業に就職した「八〇后」(1980年代以降に生まれた世代を指す中国語、パーリンホウと発音する)のアラサー女性は、勤め先から「池袋のようなところでなくもっといい場所に引っ越したらどうですか」と勧められたが断っている。

治安への不安払拭が課題

ファッションに気を配る面ではこの女性は同世代の日本女性にひけをとらないが、こと住まいに関しては一味異なる。「日本語学校のときから住み慣れてるし、とても便利なんです。何で引っ越せと言われるのかよくわからない」と不満気だ。

この八〇后の女性は気にしていないが、チャイナタウンでは伝統的に治安への不安がつきまとってきた。

かつてジャッキー・チェン主演の映画「新宿インシデント」(2009年)で描かれた日本の組織暴力団と中国系マフィア(中国語で黒社会)の抗争があった1990年代の歌舞伎町と同様に、池袋も決して治安がいい上品な街とは思われていない。隣接する立教大学の学生の中には今も「西口の繁華街は怖いので近づかない」という者もいるほどだ。

その池袋でまた今年6月、中国系の若手企業家として期待されていたネットカフェ「大任」の経営者ら3人が海賊版ソフト使用の容疑で逮捕され、一部で「不正アクセス、会員情報取得目的での海賊版利用」の容疑とも伝えられた。「事件、犯罪はどこでもあること。99%以上の中国人はまじめに働いている」(1980年代以降に来日した新華僑ビジネスマン)というが、こうした事件が今も旧来の負のイメージからの脱皮を妨げている。

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