日本のエスニックタウン

東京の新しいチャイナタウン—池袋

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山下 清海 【Profile】

中華街は開国以来の老舗エスニックタウンだが、近年、日中経済関係の緊密化に伴い、池袋にも新たに中華街が形成されている。その実像とは。

池袋チャイナタウンを歩こう

池袋チャイナタウンのゲートウエイは,池袋駅北口である。ここで待合せをする人びとの中には,中国人が多い。池袋駅北口から1分も歩かないうちに,中国らしい赤い看板を掲げた中国食品スーパー「陽光城」がある。池袋チャイナタウンのシンボル的存在である。その向かい側の雑居ビルの4階には,「知音中国食品店」の後継である「中国食品友諠商店」があり,中国食品なら何でも揃う。同じビルの2階には中国書店「聞聲堂」がある。

池袋チャイナタウンの中国関係の店舗の大多数は,日本三大中華街とは異なり,雑居ビルの上層階か地階にある。1階には,日本人経営のチェーン店や古くから営業している店が多く,新華僑が1階で開業したくとも,空きテナントが少ないからである。池袋チャイナタウンを歩く際には,上を向いて歩くのがコツである。

焼き小龍包専門店「永祥生煎館」

多くの日本人にとって,雑居ビルの上層階や地階にある中国料理店には,なかなか入りにくいものである。このような場合,ランチタイムに訪れるのがよい。たいていの中国料理店では,ランチメニューを用意している。日替わり定食のほか,麻婆豆腐,青椒肉絲,酢豚,エビチリ,ニラレバなどの定食(杏仁豆腐のデザート付きが多い)が,680~800円程度で食べられる。ランチタイムには,日本人サラリーマンや学生が多い。もちろん日本語メニューがあり,中国人店員は日本語を話す。

池袋駅北口近くには,「永祥生煎館」という上海名物の焼き小龍包の専門店(4個で400円)があり,日本人客も行列を作る。

池袋チャイナタウンは,日本で中国に最も近い街である。「食わず嫌いの嫌中」の日本人にも,ぜひ池袋チャイナタウンを訪れてほしい。まずは,池袋駅北口をめざし,ホンモノの中国料理を味わってみよう。

カバー写真=池袋の中国食品スーパー「陽光城」

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山下 清海YAMASHITA Kiyomi経歴・執筆一覧を見る

筑波大学教授。1951年生まれ、福岡市出身。筑波大学大学院博士課程修了。人文地理学専攻。理学博士。世界のチャイナタウンをフィールドワークしている。著書に『東南アジア華人社会と中国僑郷——華人・チャイナタウンの人文地理学的考察』『チャイナタウン——世界に広がる華人ネットワーク』『池袋チャイナタウン—都内最大の新華僑街の実像に迫る—』など。

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