ミャンマー少数民族が日本で和平に向けて第一歩
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少数民族の武装勢力10グループの代表が東京に集結
2011年3月に軍事政権に代わって文民政府が成立したミャンマーでは、急速に民主化が進むと同時に、世界各国からの経済進出も増大した。しかし、隣接する各国との国境地帯に暮らす少数民族と中央政府との武力対立が60年以上も続き、政府軍の攻撃を受けた少数民族は自宅や農地を放棄して山岳地帯で国内避難民として過酷な生活を強いられるなど、少数民族をめぐる問題が山積していた。
中央政府の民主化と同時期に、少数民族武装勢力の連合体「統一民族連邦評議会」(UNFC)が発足。停戦合意に向けての動きが始まっていたが、長年の対立や、地域の事情の違いなどから、各民族がまとまっての交渉は難航している。また、約100万人の国内避難民への支援も、国連や各国政府はミャンマーの国内問題との判断から、手を差し延べづらい状況となっていた。
1976年からハンセン病制圧活動などでミャンマーへの支援を行ってきた日本財団は、こうした国内避難民への緊急人道支援を行うことを決定。UNFCに加盟する11のグループのうち、10グループの代表者約20人が来日、具体的な支援の実施について会議が行われた。
民間組織だから可能になった支援
日本財団の笹川陽平会長は2012年6月、日本政府から「ミャンマー少数民族福祉向上大使」に任命され、すぐに行動を開始。9月23日、タイ・チェンマイで少数民族武装勢力の連合体「統一民族連邦評議会」(UNFC)幹部と会談、食糧と医薬品を含む緊急人道支援計画の実施について覚書を交わした。10月6日にはミャンマー・ヤンゴンで、政府側の代表としてアウンミン大統領府大臣、ソーテイン同大臣と、日本財団の少数民族支配地域への緊急人道支援について政府が同意するという内容の覚書を交わした。双方の同意を受けて、東京での会議が実現した。
発表された計画では、約100万人の国内避難民を対象とした緊急人道支援計画の総額は300万ドル。初回は30万ドル分の食糧、医薬品を、UNFCの加盟グループの支配地域に配布する。具体的な配布方法、配布ルートなどについては、今回の会議で話し合われた内容を各組織が持ち帰って詳細を検討することになった。
真の民主化を実現するために
会議終了後、記者会見を開いた笹川会長は「6月に大使に就任してから、テイン・セイン大統領、アウンサン・スーチー女史ともたびたび話し合い『少数民族問題の解決なくして真の民主化はありえない』ということで一致しました。解決には対話が必要です。現段階ではミャンマー政府はUNFCを正式には認めておらず、直接の対話ができないため、日本財団が双方のブリッジの役目を果たしました。今回の支援を契機に世界中からの支援を受け入れるようなスキーム作りにつなげていきたい」と決意を語った。
UNFCのクン・オッカー副議長は「ミャンマーは急速な民主化と経済発展で注目されていますが、実際の国民の生活はまだまだ貧しいです。中でも、われわれ少数民族の暮らしは大変厳しい。いまでも政府軍の攻撃で命を落とす人がいて、食糧も、医療も、教育も足りず、安全もない。日々の暮らしを安定させるために第一に必要なのが平和です。そのためには、われわれと政府の間に中立的な立場のオブザーバーが必要。今回、私たちを受け入れてくれた、日本財団、日本政府、日本人のみなさまに感謝します」と述べた。
早ければ年内にも初回の支援物資が現地に届く見通し。笹川会長は「道路が整備されていない地域も多く、ゾウを使うようなことも考えなければ」と話していた。
撮影=コデラケイ
(※)笹川会長は2013年2月19日、日本政府から「ミャンマー国民和解に関し関係国政府等と交渉するための日本政府代表」に任命された。