イベント仕掛人・小澤隆生「日本の祭りを世界に!」
社会 文化- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
日本の伝統行事である節分の日の豆まきを「スペインのトマト祭りのように、世界中に知られるイベントにしたい」と、企画された「すごい豆まき2012」。会場では、スポットライトを浴びながらモデルのように花道を闊歩するコスプレ鬼に向かって、四方八方から一斉に豆が投げつけられ、歓声が沸き起こった。
豆まきには世界に通用する要素がある
「節分」は本来、季節が移り変わるという意味で、2月3日は新年が始まる前日、いわば大晦日を指していた。そのため新しい年に、家内に鬼(悪い事)が入り込まないことを、そして福が訪れることを願って「鬼は外、福は内」と声を出しながら豆をまく行事が始まり、今や全国各地で行われている。その豆まきを、なぜ世界に発信しうるイベントとして選んだのか?
「すごい豆まき2012」の総合プロデューサーで起業家の小澤隆生氏は「豆まきは、トマト祭りのように食べ物を投げ、牛追い祭りのように鬼に追われ、またハロウィンのように仮装もする。世界的に認知されている祭りと似た要素で構成されています。これなら世界の人にもウケるんじゃないか、そう思ったわけです」と話す。
「日々、面白いことを研究している」という小澤総合研究所の所長である小澤隆生氏は、大学を卒業後、IT企業に就職。その後中古品の販売サイトを立ち上げ、大手ショッピングサイト楽天に事業を売却した。その際、小澤氏は楽天の執行役員となり、楽天がプロ野球に参入したときには、取締役事業本部長として、ホームゲームへの集客に奔走。年間60本ものイベントを企画した。今回の「すごい豆まき2012」も、彼がライフワークとして探求する「面白いこと」のひとつとして、自分の人脈ひとつで実行までこぎつけた。
Facebookが会場の熱気を拡散させた
イベントを実行するために活用したのはFacebookだ。会場に集まった600人すべてをFacebookで集客したほか、スタッフサイドのオペレーションやパブリシティなどにもFacebookを活用した。
「インターネットには無限の可能性が広がっています。Facebookはもはやひとつの武器。イベントを告知するのにホームページを作るのでは、砂漠の中に店を建てるようなものだけれど、Facebook上でなら、8億人が集まるデパートに出店するようなもの。大量の集客が見込めます」
さらにFacebookで集まった客たちが、今度は自分たちで情報を発信しようとするため、さらに広範囲に情報が拡散する。実際、会場内は「面白い出来事を発信しよう」という意気込みに満ちた人であふれ、一種異様な熱気に包まれていた。
とはいえ、今回のイベントが広がった範囲は国内のみにとどまったようだ。国内のTV局や新聞社の取材陣は訪れたが、海外プレスを含めた外国人の参加者はゼロだった。これに関しては小澤氏も「まったく手応えゼロでした」と反省することしきりだったが、まだ豆まきを世界に広めることに対する情熱は萎えていない。「来年はもっと祭りの精度を上げて開催しますよ」と意気軒昂だ。
日本には「かっこいい」ものがたくさんある
今回もイベントを立ち上げるにあたって、ただの「豆まき」にさまざまな工夫を凝らした。一番考慮したのは、投げる豆についてだ。豆まきは伝統行事ではあるものの、食べ物を投げることに対する抵抗感から、最近は包装された豆を投げて行事を行うところも多い。そこで、食べ物を無駄にしないようケアしつつ、イベントがつまらなくならないように熟考を重ねた。そして決定したことは
- 被災地の農家から食用では出荷できない豆を買う
- 投げ終わった豆を再利用する
ということだった。最終的に、宮城県の農家から条件にあった豆を仕入れ、投げ終わって床に散りばめられた豆は、業者に渡して堆肥にすることとなった。
イベントを仕掛けるには、手間も時間もそしてお金もかかる。スポンサー集めは順調だったが「予算が足りない場合は俺個人が補填する」という言葉を小澤氏が口にしたこともあった。何がこれほど彼を突き動かしたのか。そのパワーの根底にあるのは、日本への愛だ。
「日本が好き。今でも十分、日本ってかっこいいと思っているけれど、まだあまり知られていないかっこいい部分っていっぱいあると思っています。それをもっと世界中に発信していきたい」
豆まきだけでなく、知られざる日本文化が世界の人々の注目を集めた時、その裏では、この男が糸をひいていることは間違いなさそうだ。
撮影=川本 聖哉(イベント)、高島宏幸(インタビュー)