14人が辞職した富山市議会:地方メディア記者たちの闘い

社会

14人もの議員が辞職した富山市議会の政務活動費不正。これを明るみにした地元のチューリップテレビと北日本新聞の報道に対し、2017年に多くの賞が贈られた。“保守王国”の政治の闇を突き崩した記者たちを取材した。

市民の怒りを地方自治への関心に

市議補選からほどない2016年11月、北日本新聞は富山市内で「議会は変われるか」をテーマに公開シンポジウムを実施。会場には800人を超える市民が詰め掛けた。17年1月からは大型の連載企画『民意と歩む 議会再生』をスタート。政活費のずさんな管理とチェック機能の欠如、自民会派の派閥支配、議員らが独自につくった「経費水増しの裏ルール」などを次々と明らかにした。

第5部まで57回を重ねた連載では、県外の議会改革先進地での取り組みや、市民の議会傍聴を促すために議論を聞くノウハウを紹介する内容まで盛り込んだ。「一連のドミノ辞職は、不正を見つけては議員の首を取る『捕物帳』ばかり。これだけではだめで、市民の怒りや憤りを議会、地方自治の関心に昇華させたい」(片桐)との意図があった。

公開シンポジウムの内容を詳細に報じた、2016年11月13日付の北日本新聞の紙面

富山市議会はこれまで、全国47の中核市の中で唯一、本会議のケーブルテレビ・インターネット中継が未実施。全戸に配布される『市議会便り』に、個々の議員の議案に対する賛否の結果さえ記録されないなど、きわめて閉鎖的な体質だった。一連の不祥事の反省から、議会の「透明化」はこの1年でかなり進んだ。政活費の使途は第三者機関で審査され、現在は領収証がホームページで公開されている。

一方で、有権者の反応は今ひとつだ。16年11月の市議補選の投票率は26.9%、市長選と重なった17年4月の市議選でも47.8%と低調だった。

「つまり、まだキャンペーンは終えられないということ。市民の怒りをプラスの行動に変え、『お任せ民主主義』をいかに脱することができるかが今後の課題」と片桐は言う。チューリップテレビの宮城も「ただ不正を暴き、議員を辞職させるためではない。地方政治はもっと市民の身の回りの問題を解決していくべきだ、というのが自分の問題意識だった」と一連の報道を振り返る。富山の記者たちの挑戦は、これからも続く。(本文敬称略)

取材・文:石井 雅仁(ニッポンドットコム編集部)

バナー写真:情報公開で入手した富山市議会の政務活動費支出伝票(チューリップテレビ提供)

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