立法会選挙と香港の未来:香港政治が専門の立教大学准教授倉田徹さんに聞く

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香港立法会選挙を9月4日に控え、争点が選挙そのものの妥当性に変わった。今後、街頭政治が再燃しかねない状況で、倉田徹氏は、根本解決には香港統治の原点回帰しかないと考える。

倉田 徹 KURATA Toru

立教大学法学部政治学科教授。1975年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。大学院在学中に在香港日本国総領事館専門調査員。金沢大学人間社会研究域法学系准教授を経て2013年から現職。中国現代政治が専門。著書に『中国返還後の香港―「小さな冷戦」と一国二制度の展開』(名古屋大学出版会)=2010年度サントリー学芸賞

「高度な自治」の原点に戻ること

野嶋

 香港問題の在るべき解決というのはどこにあると思われますか。

倉田

 私は結局のところ、いわゆる「高度な自治」の原点に帰ることだと思っています。1997年の返還のころ、香港は政治的には穏やかでした。北京の干渉も少なく、落ち着いていました。2003年にデモがあって、中国は政治面でもコントロールを強め、国家安全の脅威となるものを根絶やしにするように、状況はエスカレートしていきました。しかし、実際の香港社会は、それをやればやるほど反発し、どんどん急進化しています。非常に不毛なことをやっていると思います。

反中国や本土派の勢力は、中国がこれといった手出しをしなければ同情票も集められないし、怒りや反感をエネルギーに運動を盛り上げることもできません。余計なことを北京がしなければいいのですが、習近平政権はそれができないでしょう。中国国内でも弁護士や知識人への締め付けは強まる一方ですが、大きな目でみれば、香港もその流れにあるのでしょう。

バナー写真=2016年7月1日、香港行政長官の選挙制度改革再始動を求めて行進する民主派デモ隊=香港島・湾仔(時事)

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