「オバマ広島訪問」:期待高まる現地
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「生きている間にこの日が来るとは」
「自分の生きている間にこの日が来るとは信じていませんでした。英語を話せる語り部として欧米からの来訪者に被爆地の苦難を伝え、オバマ大統領の広島訪問を呼びかけてきました。われわれの努力が少しでも役立ったとしたらうれしく思います。ただ、今回のことは核なき世界に向けた一歩にすぎません。被爆者の一人として、原爆の投下など人としてしてはならないと、ここ広島から全世界に向けて今後も訴えていきたいと思います」
学童疎開の年齢に達していなかったため、広島市内で小学2年生で被爆した小倉桂子さん(79)はnippon.comのインタビューにこう語った。
オバマ米大統領が伊勢志摩サミットの直後、5月27日の夕方に、現役の大統領として初めて被爆地・広島を訪れるとホワイトハウスが正式に発表した。その先駆けの役割を果たしたのは、4月10日、11日の両日に主要7カ国(G7)外相会議で広島を初めて訪れたケリー米国務長官だった。ケリー長官は平和記念公園にある慰霊碑で原爆死没者に献花し、他の外相を誘って当初は予定になかった原爆ドームを訪れている。帰国後は大統領に広島を訪れるよう強く促したという。
この時、地元の民放、広島テレビの特集番組に出演した小倉さんは、「われわれ被爆者は、アメリカ大統領に謝罪のために来てほしいと言っているのではないのです。初めて原爆を投下したアメリカの大統領として被爆の現実を見てもらい、核軍縮に向けて何ができるかを考えてほしいのです」と語った。この発言は“被爆者の思い”として、米大使館を通じワシントンにも伝えられたという。
2015年9月に、オバマ大統領の広島訪問を訴える市民1400人の「大統領への手紙」を携えてホワイトハウス高官を訪ねた三山秀昭氏(ジャーナリスト、広島テレビ社長)は「ホワイトハウスが日米共同で原爆の犠牲者に哀悼の意を捧げると述べているくだりが重要です」と指摘。
12人の米兵 が当時、東アジアの各地から徴用された人々とともに原爆の犠牲になった事実を踏まえ、オバマ大統領が全ての原爆犠牲者に哀悼の意を表わそうとしているとの見方を示した。
原爆ドーム背に「ヒロシマ・スピーチ」予定
大統領の広島訪問の準備にあたる米政府関係者によると、オバマ大統領は伊勢志摩サミットの2日目となる5月27日の夕刻に平和記念公園を訪れ、まず原爆資料館に足を運び、続いて原爆死没者の慰霊碑に花を手向けるという。
その後、オバマ大統領は原爆ドームを背に「ヒロシマ・スピーチ」に臨み、2009年のプラハ演説を踏まえて「核なき世界の実現」を再び全世界に訴える。会場には被爆者や地元の小中学生など約1000人を招く意向だという。雨天の場合は公園内の広島国際会議場がスピーチ場所になるという具体的な情報もある。
核軍縮に向けての動きはオバマ政権の発足時に較べ、ウクライナを巡る米ロの対立もあって滞ったまま。一方、米国内では共和党の大統領候補に事実上決まったトランプ氏が、日本や韓国の核武装を容認する発言を繰り返している。こうした中で、被爆地・広島でのオバマ・スピーチが核なき世界に向けた新たなモメンタム(勢い)をつくりだせるのか。被爆地が寄せる期待は大きい。
文・nippon.com編集部
バナー写真:広島市の原爆ドーム(手前)と平和記念公園=2015年8月6日撮影(時事)