マイナンバー制度:導入の意義と今後の活用

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2016年1月の社会保障・税番号(マイナンバー)制度開始を前に、個人番号の通知が10月から始まった。世界各国の番号制度に詳しい筆者は、今回の制度導入に伴うオンライン情報連携を「経済活性化のための社会インフラとして積極活用すべきだ」と提言する。

納税者の申告は簡単に

一方、納税者にとって利便性の高いものにしていく必要があり、「記入済み申告制度」の導入が考えられる。

この制度は、税務当局が、源泉徴収票などの支払調書の記載内容である、給与収入や年金の金額や、その源泉徴収額などをあらかじめ申告書に記入して納税者に送付し、納税者はその内容を確認、必要に応じ修正して税務申告が終了するという制度で、欧州諸国で納税者サービスの一環として行われているものである。本来国税当局が行う行政サービスであるが、わが国では、マイナンバーカードとマイナポータルを活用しての検討が行われている。

具体的には、年金支給額や社会保険料の納付額、生命保険等の保険料控除証明、医療費支払情報などをマイナポータルで受け取り、税務申告書に自動転記してe-Taxする仕組みである。

医療分野の情報への付番は、個人情報保護やプライバシーへの配慮から慎重な意見が多いが、医療情報には、医療費支払い情報、レセプトデータ、カルテ等があり、情報の性質により機微性は異なる。医療費支払い情報には、機微な情報は少ない一方で、医療費控除が簡素になるという大きなメリットがある。国民が、番号制度の利便性を実感するためにも、医療費支払い情報をポータルに送付する仕組みが必要である。

経済活性化のための社会インフラとして

日本社会の高齢化は確実に進んでおり、労働人口の減少は経済にとって大きな負荷となっている。これを乗り切り経済社会を活力あるものにするには、経済社会全般にわたってICTの活用を進めていくことが不可欠である。その切り札となるのが、マイナンバー制度である。

マイナンバー、マイナンバーカード、マイナポータルという3つの新たな社会インフラを活用し、国民が利便性の高い国・自治体のサービスを受益するとともに、さまざまな民間利用を広げていく。そこに大きなビジネスチャンスも生まれる。マイナンバー制度の運用については、経済・社会の活力を保持するという観点から知恵を出し合うことが必要とされている。

バナー写真:社会保障・税番号(マイナンバー)制度導入後、希望者に配布されるICカード「個人番号カード」のイメージ見本。国民一人ひとりに12桁の番号が割り振られ、顔写真が付くので身分証として使えるほか、健康保険証と一体化することなどが検討されている(時事)

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