マイナンバー制度:導入の意義と今後の活用

政治・外交 経済・ビジネス 社会

2016年1月の社会保障・税番号(マイナンバー)制度開始を前に、個人番号の通知が10月から始まった。世界各国の番号制度に詳しい筆者は、今回の制度導入に伴うオンライン情報連携を「経済活性化のための社会インフラとして積極活用すべきだ」と提言する。

欧州諸国の番号制度と比べての特色

先進諸国で導入されている番号制度の活用法を見てみよう。最も番号を活用している国はスウェーデンで、1947年に住民登録番号(PIN)として利用し始めた。国税庁が付番機関となっており、番号をもとに行政機関間で広く住民登録情報が共有され、民間利用も含めて活用されている。例えば、行政が保有している住民の所得情報などは、有料で民間に情報提供が行われている。ある企業が、特定地域の住民にマーケティングしたいという場合、有料で特定地域の住民の住所・氏名・所得情報まで提供している。

この対極がドイツである。ドイツは第2次大戦中、ユダヤ人の体に番号を焼き付けて管理したという歴史があり、国民の番号に対する不信感は極めて根強いものがある。今日に至るまで、国民の番号に対する抵抗感は強く、複数の行政分野で利用できる統一番号は導入されておらず、税務目的に限定した納税者ID番号が導入されているだけである。

両国の中間がオランダである。活用されている市民サービス番号(Citizen Service Number)は、社会保障・税番号(SoFi Number)を置き換える形で2007年に導入され、毎年国民の議論を経て活用範囲が拡大されてきた。今ではほとんどの行政分野で活用されている。

このように、番号の活用法は、歴史や経緯により大きく異なっている。日本でも、法施行後3年を目処に、パスポートや戸籍、医療など5分野への拡大が検討されることになっている。すでに預貯金口座への付番を18年から始める法律改正が行われた。当面は預金者には番号の告知を義務付けないが、いずれ告知は義務付けられ、預金口座への付番は拡大していくだろう。

税の補足、預貯金口座には大きな効果

正確な税の捕捉にとってマイナンバーは有力なツールだが、オールマイティーではない。個人事業者の売り上げを番号で把握しようとすれば、消費者が、店で購入の都度、店の番号付きで税務当局に購入金額を報告し、それを店(小売事業者)の申告と付き合わせる(マッチング)必要があるが、このような制度は現実的ではない。

「経費」についても、正確に把握するには、小売事業者の支払いが、所得を得るために必要な支出(「経費」)であるか、個人的な消費(家事費)かを区分しなければならないが、番号を付けても区分は難しい。このように、事業所得などへの活用には限界があるが、預貯金口座への付番は適正な申告に向けての大きなけん制効果になろう。

次ページ: 納税者の申告は簡単に

この記事につけられたキーワード

社会保障 行政

このシリーズの他の記事