18歳選挙権で政治は変わるか

政治・外交 社会

菅原 琢 【Profile】

選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が国会で可決・成立。2016年の参議院選挙から、多くの高校生も主権者として“一票の行使”ができるようになる。70年ぶりの制度改正で、日本の政治は変わっていくのか。

政治と若年層の距離を詰めるには

これまで政界の側は、選挙運動や政治活動の「スタッフ要員」として学生を頼りにする一方で、政策を通して支持を広げたり、学生を政党組織に取り込むような活動には一部の政党を除いて積極的ではなかった印象がある。言い換えれば、学生を支持者や票として意識してこなかったと言える。

こうした傾向があるとすれば、選挙運動組織の形成と維持が政治家個人に委ねられているという、主要政党の組織の現状を反映したものだろう。大学生は政治に関心が低く、投票にも行かず、住民票を現住地に移していない場合も多く、卒業すれば違う場所に移住する可能性も高い。一方、選挙区で選出される日本のあらゆるレベルの政治家は、自らの選挙区に居住しない有権者、選挙区外に出ていくと予想される有権者に積極的にアプローチし、組織化する誘因を持たない(※3)。こうした現状を補うべきは政党組織ということになるが、どの党も組織は脆弱で、学生、若年層への支持拡大の取り組みに継続性がないように見える。

組織以上に問題となるのは、学生に限らず、一貫した政策体系により有権者を引きつけることができない点である。職業や職場の利害、あるいは地域の人と人との結びつきに頼る政治家の従来からの支持者獲得手法は、有権者の職場や居住地が固定されて意味を持つものであり、大学生には適さない手法である。そうした「しがらみ」が希薄で、同世代で構成された集団において横方向にネットワークを構築していく際には、政策的な訴えが他の集団よりも有効と考えられる。

それではどのような政策を訴えれば票になるか、というのが政治家やメディアの次なる関心となるだろう。しかし、ここでその疑問に答えるつもりはない。実際に若年層に接触し、支持者として取り込み、一緒に作り上げていくのが近道だからである。現代の日本の政党は、草の根レベルから政治的課題に取り組むということをせず、政治家と官僚、有識者などエリートが上から提供するのが政策だという認識が根強い。こうした一方通行が、政治と有権者の距離を生んでいる一因であると思われる。

このように考えていくと、結局、18歳選挙権というチャンスを政界が生かせるかどうかは、多様な有権者との距離をいかに縮められるか、政治への関心と期待をいかに取り戻すかという、現在の政党政治の課題と地続きの問いと言えそうである。18歳選挙権は、それだけで何かの特効薬となるものではない。しかし、これをきっかけに政界の取り組み、組織、意識などが変わるかもしれないという期待くらいは、抱いてもよいものではないだろうか。

バナー写真:高校2年生約300人を対象に行った、安保法制の賛否を問う「模擬国民投票」の様子=2015年7月8日、京都府宇治市の立命館宇治高校(時事)

(※3) ^  この点については、拙稿「不安定化する社会に対応できない日本の選挙」(『中央公論』2015年4月号)も参照されたい。

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東京大学先端科学技術研究センター客員研究員。博士(法学)。専門は政治過程論、現代日本政治。1976年生まれ。東京大学法学部卒業、同大大学院法学政治学研究科博士課程修了。現代日本政治をテーマに新聞、雑誌への寄稿多数。著書に『世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか』(光文社新書)、『平成史』(河出ブックス、2012年、共著)など

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