キティちゃんを世界のアイドルに育てた男―鳩山玲人・サンリオ常務に聞く

経済・ビジネス 文化

ハリウッドセレブにも愛されるサンリオのキャラクター「ハローキティ」40周年を祝い、世界各地で記念イベントが開催された。キティのグローバル展開の功労者が、海外戦略の成功の要因と今後の展望を語る。

鳩山 玲人 HATOYAMA Rehito

サンリオ常務取締役。1997年青山学院大学国際政治経済学部を卒業後、㈱三菱商事に入社。エイベックスやローソンなどでメディア・コンテンツビジネスに従事。その後、海外に渡り、2008年にハーバードビジネススクールでMBAを取得。同年、サンリオに入社し、2010年、取締役事業戦略統括本部長就任。現在、経営戦略統括本部、全社統括室を担当。著書に『桁外れの結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか』(幻冬舎)。サンフランシスコ在住。

サンリオ後継者の急逝を乗り越えていく

順調に海外事業を拡大させてきた鳩山氏だが、サンリオに入社してからの5年間の快進撃は、2013年11月に急死した辻邦彦副社長の後押しが大きかったと率直に語る。

「5年前はサンリオの日本国内での事業が不振で、海外ぐらいしか成長余地が見いだせなかった。経営危機だったからこそ、いろいろ新しいチャレンジができた。辻副社長が思い切って海外ライセンス事業に舵を切る方向に、背中を押して支えてくれました」

次期後継者に予定されていた辻副社長亡き後、今後の海外展開をどう進めたいと思っているのだろうか。

「根源的に変わらないのは、ハローキティの『かわいい、仲良く、助け合い』の精神、それにサンリオの『スモールギフト、ビッグスマイル』という、ミッション・ステートメントの相乗効果から生まれる事業力は非常に大きいということです。今後も、ハローキティを中心にしたサンリオのブランド・ビジネスをグローバルに進めていくというのが一つのミッションだと思っています」

日用品からおしゃれグッズまで、あらゆる年齢層のキティフアンに向けた商品を展開。

新興国マーケットの開拓と成熟市場の安定成長を

よくディズニーが「競合相手」に挙げられるが、サンリオは「ライフスタイルブランドで、ディズニーとは違うところで勝負している」。

今後の海外展開の課題は、拡大した主要国マーケットの安定化と並んで、新興国マーケットの開拓だという。

「インド、ロシア、アフリカなどの成熟していない新興国のマーケットでも、20代、30代の比較的富裕な層に向けたマーケットは存在します。一方で、女の子がみんなハローキティを持っている状態になるには、10年、20年かかります。ですから、成熟市場とは全く違う戦略に基づき、中長期で考えていく必要があると思っています」

アジアでは、物販中心からライセンス事業にシフトさせている中国を中心に、まだ伸びしろがあると考えている。韓国は参入が早かったため、中長期の安定を目指している成熟マーケットだそうだ。

「台湾も成熟マーケットですが、さらに浸透度合いが高い。最近ではEVA AIRと組んでハローキティジェットを運行させています。テーマパークにライセンス供与をしたり、ハローキティの産院やハローキティホテルがあるなど、いろいろな取り組みができている国の好事例です。11月にはハローキティの誕生日に合わせてハーフマラソンも開催されました」

「こんなところにもキティが!」という驚きを与えたい

一方で、IP( Intellectual Propery=知的財産/ここではキャラクター版権)のポートフォリオを広げる戦略も進め、その一環で『Mr. Men Little Miss』という英国のIPを買収した。

写真手前に並んでいるのが『Mr. Men Little Miss』のキャラクターたちだ。

「このキャラクターは欧州、特に英仏で非常に知名度が高い。ハローキティと同様のプラットホームに乗せて、よりグローバルに展開ができると思っています。こうした新たなIPポートフォリオをどうやって育て、拡大させていくのかは、新しいチャレンジです」

意外なところにハローキティを登場させて「皆さんを驚かせる」チャレンジは今後も続けていく。

「例えばデジタル領域です。LINEのハローキティスタンプなどは、非常に大きい成功を収めていますが、活躍の場をこうしたデジタルの新しい領域にも広げていくことで驚きを生むはずなので、今後の展開もぜひ楽しみにしていただきたいと思っています」

(2014年11月サンリオ本社でインタビュー)

聞き手・文 板倉君枝(編集部)/撮影:山田愼二

 

この記事につけられたキーワード

キャラクター ハローキティ サンリオ

このシリーズの他の記事