昆虫を食べてみた

文化

世界規模の人口増加により、近い将来に食料危機が到来するとも指摘される中、未来の栄養源としての昆虫、いわゆる「昆虫食」への注目が徐々に高まっている。

実際、タイや日本など世界には蚕などの昆虫を食する文化を持つ地域が数多くある。また最近は、昆虫食に関する本が出版されたり、その魅力を紹介するイベントが開催されたりするなど、昆虫の認知度を高める取り組みがなされている。

東京では、2018年2月に「昆虫食ナイト」と題するイベントが開催され、異次元の食体験を求めて約30人のグルメたちが集まった。

ハチノコのクスクスとゴキブリのピンチョス

案内人は、昆虫料理研究家で『むしくいノート』の著者でもあるムシモアゼルギリコ氏、昆虫メニューも出す東京の居酒屋「米とサーカス」を運営する企画プランナーの宮下慧氏、そして珍味マニアのグルメライター、ほそいあや氏の3人だ。

昆虫食ナイトでは5品の昆虫料理がふるまわれた

虫とマドモアゼルをかけた「ムシモアゼル」を名乗るムシモアゼルギリコ氏。彼女が調理したハチノコのクスクス、イナゴと蚕のつくだ煮、ツムギアリの水煮を使った雑穀米のサラダ、そしてアルゼンチンモリゴキブリとフルーツを一口サイズで串に刺したスペイン風プレート「ピンチョス」などがテーブルに並んだ。

「ハチノコとクスクスの組み合わせは最高です」という彼女は、イナゴと蚕のつくだ煮は日本の一部の地域では伝統食として親しまれてきたと指摘する。「アルゼンチンモリゴキブリはフルーツが大好きなので、よく揚げて一緒に組み合わせてみました」

昆虫を食べるメリットは何かと尋ねると「将来、人口過剰が原因で食料不足になるとよく言われますが、問題は食料が足りなくなることではなく、タンパク質を十分取れなくなることです。その点、昆虫はタンパク質を豊富に含んだ理想的な食べ物なのです」

アルゼンチンモリゴキブリはリンゴとよく合う

最初の一口が最大のハードル

イベント主催者から昆虫食の利点を説明されても、なかなか最初の一口が進まない参加者もいた。ほそいあや氏は「虫は気持ち悪いという考えを捨てれば、食用にも適していることが理解できるはずです。この恐怖心を乗り越えれば、どんな状況でも生き残るチャンスが高まるはず」と背中を押す。

ほそい氏がタイで初めて昆虫を食べたのは、10年ほど前のことだ。タイでは昆虫のおやつがよく露店で売られているという。「最初の一口が最大の関門ですが、一度食べてしまえば、あとは何でも来いという境地になれますよ」。今回のイベント参加者もまさにそれを体験していた。

インスタグラムなどのソーシャルネットワークで話題になったり、一部の有名人が取り上げたりしたことで、このようなイベントへの注目度は高まっている。また、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが昆虫を調理して食べているという報道を見て興味を持つ人が増えたとも言われている。

日本にもある飼育販売会社

食用の昆虫がスーパーで売られるようになるのは、まだかなり先のように思える。今回のイベントでは、東京に拠点を置くデュビアジャパン社から安全な昆虫を調達した。同社の今井義明社長は当初、もともと爬虫(はちゅう)類の餌として昆虫を飼育していたが、今では食用昆虫を専門に扱っている。

日本の伝統料理、蚕とイナゴのつくだ煮

「飼育で最も難しいのは湿度の調整です。昆虫は湿っていて温かい環境を好みます」。同社の売れ筋商品はアルゼンチンモリゴキブリと蚕で、野菜や果物など健康的な食事をさせていると言う。「近いうちに、スーパーでも食用の昆虫を売れるようになればいいですね」と今井氏は笑った。

食用昆虫を扱う際はいくつかの危険も考慮しなければならない。例えば、甲虫の一種ツチハンミョウは、加熱しても体内の毒は分解されないので食用には向かない。「ほとんどの昆虫は調理すれば食べられますが、肉と同様、生で食べるのは避けた方がいいですね」とムシモアゼルギリコ氏。

昆虫食文化がさらに広まれば、スープに昆虫が入っていても全く気にならない日がいずれ来るかもしれない。

原文スペイン語。バナー写真:2018年2月15日、江東区清澄白川の「しごとバー」で開催された「昆虫食ナイト」イベントのメニュー、タイ産ツムギアリが入った栄養満点の雑穀米サラダ

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