台湾先住民ツォウ族の村に嫁いで 結婚・移住手続き編

国際 暮らし

品川 真紀 【Profile】

台湾と関わって20年以上になるが、私が台湾先住民族の文化に触れたのは実はごく最近のことだ。がむしゃらに50回以上も彼らの村や祭典を訪れるうち、これが自分のライフワークだと感じるようになり、2017年のある時、私の目の前に一人のツォウ族の男性が現れ、運命に引き寄せられるまま、私たちは結婚することになった。

昨今、日台カップルは珍しくない。私の身辺にも数多くいる。しかし私は山に住む先住民族に嫁いだ。必要な書類さえそろえていれば問題なく手続できるだろう一般的なカップルとは訳が違った。私の予想をはるかに超える大変な出来事の連続だったのだ。

嫁ぎ先の阿里山・楽野村の風景(筆者撮影)

台湾での婚姻届の手続きからつまずく

結婚は当人らの思いだけでは形にならない。必要な書類を提出して初めて成立する。

私は書類を準備するに当たり、まず個人のブログ等に紹介されている先輩らのアドバイスを参考にした。どうやら台湾で先に手続きをする方が書類も少なく済むらしい。台湾での必要書類は私の戸籍謄本1通、台北駐日経済文化代表処もしくは日本各地にある台湾の弁事処より発行された婚姻要件具備証明(独身証明書)およびパスポートの3点。私は戸籍謄本を持って台北駐大阪経済文化弁事処へ出向き、翌日に交付された独身証明書を持って台湾へ向かった。

台湾での結婚手続には事前に台湾の戸政事務所(日本の役所に当たる政府機関)で入手した「結婚書約」(婚姻届)が必要で、結婚の証人となった二人の署名捺印もなければならない。まずは婚姻届を完成させ、帰国前日の午前中に阿里山郷にある嘉義県竹崎戸政事務所阿里山弁公室を訪れた。

「結婚書約」(婚姻届)(筆者撮影)

そこは1日に何人訪れるか分からない静かな事務所で、早速書類を提出すると、何と2日かけて取得した有効なはずの独身証明書が違うという。そんなはずはない、私は取得した際に窓口担当者に間違いはないか何度も確認した。おまけにパソコンの婚姻登録システム上のフォームでは日本人名の入力ができないとまで言われた。戸政事務所のシステムの問題ならこちらはどうすることもできない。私は全く想定外の事態にいら立ち、「書類は日本の事務所に直接確認して、入力方法に関してはそちらで尋ねるなりして、何とかしてほしい」と伝え、一旦引き下がった。午後に連絡があって再び出向くと、独身証明書と入力の件は解決したが、今度は私の戸籍謄本の中国語訳がいるという。それは私が事前に調べた情報にはなかった。しかもこれは必須書類で、独身証明書を取得する際に窓口で言われなかったのかとまで問われた。

言われなかったのだ――。

そこで事務所と話し合い、ひとまずは日本の公証役場で証明してもらったものを、訳文は後日提出し、届自体はこの日の受理となった。こうしてほぼ1日かけて台湾での結婚が成立し、夫の戸籍謄本の配偶者欄に私の名前が入った写しが発行された。

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品川 真紀SHINAGAWA Maki経歴・執筆一覧を見る

兵庫県出身。1997年、初めて台湾を訪れ、道教陣頭文化に魅了される。その後、台湾先住民族の文化、自らの原点を見出し、5年間ほぼ毎月台湾に通い、各地の集落を訪ね歩く。2017年にツォウ族の夫と出会い翌年結婚。日本人としても外国人としても珍しい台湾先住民族に嫁いだ女性として、現在、阿里山・楽野村に定住。
個人ブログ: ガイドブックにない台湾を求めて~台湾漫遊日記

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