大阪人と台南人、なぜ似ている?——引かれ合う日台の古都交流

文化

「台南紅椅頭観光倶楽部」が大阪でPR

近年、台南と大阪の関係がとみに深まっている。2014年にヤマサキタツヤ・ハナコ兄妹が『オモロイ台南』を出版、15年にチャイナエアラインの関西空港―台南空港直行便が就航。また同年には台南市政府観光旅遊局の協力の下「台南紅椅頭(アンイータウ)観光倶楽部」が結成され、以来4年間、大阪中央公会堂とその周辺で大規模かつユニークな観光プロモーションイベントを展開している。切り絵アーティストの楊士毅氏による台南の象徴・鳳凰木をモチーフにした全長6メートルにも及ぶ切り絵作品や、同じく成若涵氏による台南の街角を描いた切り絵作品の展示。台湾の日常風景をフィルムカメラで撮り続けている「生活カメラマン」叮咚(ディン・ドン)氏による、台南の女子旅とスイーツをテーマにした写真展。台湾人が経営する「カフェレストりん」(大阪市東淀川区)とのコラボによる台南の食材を用いた小料理の提供など。ちなみに紅椅頭とは台南の露店などによく置いてあるプラスチック製の赤いスツールのことで、ここでは庶民の暮らしの象徴として位置付けられている。毎年大阪中央公会堂で開催されているPRイベントでは300個の紅椅頭が台南から会場に持ち込まれ、最後は参加者に無料で持ち帰ってもらっている。

「台南紅椅頭(アンイータウ)観光倶楽部」による大阪中央公会堂での台南観光PRイベント。イベント終了後、会場の紅椅頭は全て無料で参加者に持ち帰られた(提供:台南紅椅頭観光倶楽部)

紅椅頭観光倶楽部の活動でもう一つ特筆すべきは、17年12月に大阪市の中之島公園で開催された「大阪・光の饗宴」会場でのランタン展示だ。台南市民の手により丁寧に彩色が施された、計1000個に上るランタンが寒空の下、人々の心に灯をともした。なぜランタンかというと、台湾の冬の風物詩として元宵節(旧暦1月15日)の時期に彩色や造型が施されたランタンを飾る習慣があるからで、台南の廟(びょう)・普済殿のランタン祭りはとりわけ有名だ。

大好評だったランタン展示「台南・光の廟埕」は、18年も中之島公園で開催される。期間は12月14日から25日まで。同時期に大阪市役所1階のホールでは、台南の手工業をテーマにした写真展示が開催され、15日午後7時には同会場で台南を拠点に置くシンガーソングライター・謝銘祐氏のコンサートも開かれるので、ぜひ足を運んで大阪で台南を感じてほしい。

観光の「光」とは知恵を指し、旅とは本来よその土地の人々の生活の知恵を学ぶことだったという言葉を、映画監督・大林宣彦氏は残している。筆者は台南紅椅頭観光倶楽部の翻訳のサポートをしながら彼らの活動と努力を間近で見てきており、感じたことがある。それは、旅をするのは何も人だけではなく、町も旅をし、学び、成長していくということだ。台南市はここ数年来、大阪の人々に向けて魅力をPRするために、自分の町に関する膨大な情報を収集し、蓄積してきた。それはそのまま自己を見つめ、認識を深める経験となっている。他郷の知恵を学ぶ行為としての観光が、これからも大阪と台南との間で、あるいは他の都市と都市との間で、さまざまに進展していくことを願いたい。

バナー写真=2017年12月大阪中之島公園で開催された「台南 光の廟埕」のランタン展示(提供:台南紅椅頭観光倶楽部)

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