変貌する観光地・原宿

文化

平野 久美子 【Profile】

“個性的な街”が消えた原宿の未来は?

テレサ・テンが、もがきながらも日本でのチャンスをつかんだ時代に住んでいた「オリンピアアネックス」も閉館が決まり、すでにテナントは退出している。もうそろそろ取り壊しになるだろう。中国や香港や台湾からやって来るテレサ・テンのファンは、テナントが立ち退いてがらんどうになった建物の前で今も記念写真を撮っているが、この一画は、2020年開業を目指して、延べ床面積2万2000平方メートルを誇る商業ビルに生まれ変わる。開発地権者は業界第4位の大手デベロッパー、東急不動産ホールディングスだ。渋谷の総合再開発と同時に原宿にも資本投下する東急不動産は、以前セントラルアパートだった敷地に12年「東急プラザ表参道原宿」をオープン、明治通りにも商業複合施設を建てている。

交差点から眺めた「オリンピアアネックス」(中村雪乃氏撮影)

1964年の東京オリンピックが契機になって、がらりと変わった原宿は、それから56年目の2度目のオリンピックを起爆剤にして、またまた変身を遂げようとしている。今後、原宿はいったいどこへ向かうのだろうか。この街で青春を送った一人として、原宿の未来像が気に掛かる。

上述した『70’s HARAJUKU』を、ぜひ海外から訪れる観光客の皆さんにも見ていただきたい。現在のような商業地になる前の、個性がきらきらしていた原宿の原風景を頭に描きながら散策すると、この街の足跡が実感できるだろう。

バナー写真=原宿駅(中村雪乃氏撮影)

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ノンフィクション作家。出版社勤務を経て文筆活動開始。アジアンティー愛好家。2000年、『淡淡有情』で小学館ノンフィクション大賞受賞。アジア各国から題材を選ぶと共に、台湾の日本統治時代についても関心が高い。著書に『テレサ・テンが見た夢 華人歌星伝説』(筑摩書房)、『トオサンの桜・散りゆく台湾の中の日本』(小学館)、『水の奇跡を呼んだ男』(産経新聞出版、農業農村工学会著作賞)、『牡丹社事件・マブイの行方』(集広舎)など。
website: http://www.hilanokumiko.jp/

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