「日本人」にも「台湾人」にもなれない人々——中華民国国籍「無戸籍」者を考える

政治・外交

日台ハーフは「日本国籍の単一国籍所持者」?

中華民国「無戸籍」者は、単に台湾人の親を持つ海外生まれの子女だけでない。先述の台湾に地縁・血縁のない華僑も、それに該当する場合がある。

なぜ現地の国籍を取らないのかと考える人もいるだろう。たとえば、中華民国国籍を所持する広東ルーツの4世のBがいるとする。Bの曽祖父は清朝末期に中国大陸から来日していたため、現在の中華人民共和国にBの資料はない。また、台湾とは縁もゆかりもなく、戸籍もないとなれば、日本国籍を取得する際、場合によっては各地にある華僑総会に出向き「親族関係公証書」を発行してもらう必要がある。仮に家族の誰もが日本国籍を取得していない状況で遺産相続の問題が生じた場合、これも大変な作業になってしまう。その他にも純粋に中華民国に誇りを持って国籍を放棄しない場合もあって、さまざまな事情が考えられる。

日本では国籍法の改正以降、両親の一方が日本国籍であれば、その子は日本国籍を取得できるようになった。先述のように中華民国(台湾)も日本同様に血統主義を採用しているが二重国籍を認めている。そのため日本国籍所持者と中華民国国籍所持者の間に生まれた子(日台ハーフ)は、成人するまで二重国籍を取得している可能性がある。一方で、日本は中華民国を国家承認していない。筆者が神戸の法務局に問い合わせたところ、日本側はこうした日台ハーフは、「日本国籍の単一国籍所持者」と見なしていると答えた。

日本と台湾の間には国交がない。また、血統主義に基づいた国籍法を採用し、戸籍制度もある。日台間の交流が活発化してる中、通婚も増えている。「国籍」は個人のことでもあるが、国家承認や国籍法の在り方、戸籍制度などの問題も含んでおり、これからも社会全体で考えていきたい問題だ。

バナー写真=休日、多くの人で賑わう横浜中華街、神奈川・横浜市中区、2010年06月20日(時事)

この記事につけられたキーワード

中国 台湾 国籍 華僑

このシリーズの他の記事