台南に求められる開発と保存の「バランス」

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一青 妙 【Profile】

食と見どころがいっぱいの台南

近頃の台湾は、中国との関係や、地震の影響を受け、屏東の墾丁や花蓮の太魯閣、嘉義の阿里山など、台湾を代表する観光地の観光客数が激減し、軒並み打撃を受けているらしい。その中で、南部の「台南」は、観光客の減少が見られず、成長し続けている数少ない地方都市だ。

なぜ台南は人気があるのか?台湾人の親戚や、友人に聞けば、みんな「因為有美食!(おいしい食べ物があるから!)」と答える。われわれ日本人にとって、台湾で食べる台湾料理はどこでもおいしいが、台湾人にとっての美食の街といえば台南を連想するのだ。熱々のスープに新鮮な牛肉をさっと通した「牛肉湯」や、台南の沿岸地区で養殖されている虱目魚(サバヒー)を使った「虱目魚粥」、プリプリのイカが入った「小巻米粉」など、おいしい台南の小吃(小皿料理)は枚挙にいとまがない。

また、孔子廟に赤崁楼、林百貨店、台南文学館など、台南には見るべき歴史的建造物や古蹟がたくさんある。

食と見どころが詰まった台南は、台北から台湾新幹線に乗り、快速なら2時間以内で着く。近過ぎず、遠過ぎない距離は、1泊の週末プチ旅行にもってこいの場所だ。台南出身の作家で、ニッポンドットコムでもコラムを持つ米果さんは、ここ10年の台南を観察し続け、「台南はいつの間にか島内小旅行の聖地となった(台南竟然變成一個島内小旅行的聖地)」と自身の連載中のコラムに記述している。

私も、台南に5年近く通い続けているが、食べに行きたい店、見て回りたい場所は、まだまだある。より多くの日本人に台南の魅力を知ってもらおうと、台南に関する本も2冊書いた。結果、ありがたいことに、それまで台南に注目していなかった人たちが、私の本を片手に台南を訪れ、紹介した店で食べ、台南ファンになった、という声を多く耳にする。

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一青 妙HITOTO Tae経歴・執筆一覧を見る

女優・歯科医・作家。台湾人の父と、日本人の母との間に生まれる。幼少期を台湾で過ごし11歳から日本で生活。家族や台湾をテーマにエッセイを多数執筆し、著書に『ママ、ごはんまだ?』『私の箱子』『私の台南』『環島〜ぐるっと台湾一周の旅』などがある。台南市親善大使、石川県中能登町観光大使。『ママ、ごはんまだ?』を原作にした同名の日台合作映画が上映され、2019年3月、『私の箱子』を原作にした舞台が台湾で上演、本人も出演した。ブログ「妙的日記」やX(旧ツイッター)からも発信中。

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