サッカーW杯に見る日台の文化

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木下 諄一 【Profile】

予想に反した日本代表の健闘

4年に一度のサッカーワールドカップ(W杯)。ひと月におよぶサッカーの祭典が終わって日常の生活が戻ってきた。日本代表は大方の予想に反して(?)決勝トーナメントに進出。多くの日本人がその活躍を「よく頑張った」と評価して気分よく大会を終えた。

確かに今回、日本の選手たちの頑張りは称賛に値するものだった。

ただ、思い返してほしい。大会の開幕が直前に迫ってもスポーツバーの予約は空席だらけで「これほど盛り上がらない大会は過去になかった」と散々叩かれていたことを。さらには「日本の代わりに(予選落ちした)イタリアに出てほしかった」なんて声さえ聞かれたことを。

それを引き起こしたのは日本サッカー協会の一連の不可解な行動だ。大会ふた月前になって突然の監督更迭と技術委員長の新監督就任という人事。「全てはスポンサーに対する忖度(そんたく)だ」と陰謀説までささやかれる中で、本番直前に行った2試合のテストマッチでも低パフォーマンス。サポーターの怒りは最高点に達した。そして、少なからぬ人が日本代表の一次リーグ3戦全敗を予想していた。

これらは全て、ついこの間の話だ。

しかし、初戦のコロンビア戦で開始早々に運よくPKを獲得、相手選手にレッドカード。1人少なくなった相手に勝利すると、一夜にして日本代表に対する評価が変わった。これを機にメディアは勝てば官軍で、火にまきをくべるがごとく連日報道を続け、国を挙げてのお祭り騒ぎとなっていったのだ。

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木下 諄一KINOSHITA Junichi経歴・執筆一覧を見る

小説家、エッセイスト。1961年生まれ。東京経済大学卒業。商社勤務、会社経営を経て台湾に渡り、台湾観光協会発行の『台湾観光月刊』編集長を8年間務める。2011年、中国語で執筆した小説『蒲公英之絮』(印刻文学出版、2011年)が外国人として初めて、第11回台北文学賞を受賞。著書に『随筆台湾日子』(木馬文化出版、2013年)、『記憶中的影』(允晨文化出版、2020年)、『阿里阿多謝謝』(時報文化出版、2022年)、日本語の小説に『アリガト謝謝』(講談社、2017年)などがある。フェイスブックとYouTubeチャンネル『超級爺爺Super G』を開設。

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