台湾で根を下ろした日本人シリーズ:市井の食の伝道師——料理人・MASA(山下勝)

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馬場 克樹 【Profile】

山下勝 YAMASHITA Masaru

幼少期から家で絵を描いたり、粘土細工をしたり、モノを作ることが好きだった。中学生で漫画『包丁人味平』に夢中となり、料理人の兄の背中を見て、高校時代には自らも料理人になろうと決意。神奈川のレストランでの下積みを経て20歳でカナダに渡り、異なる価値観が共存する多文化社会で10年ほどもまれた。この経験が山下を人として熟成させ、後に台湾で料理人MASAとして花を咲かせる基礎となった。これまでに10冊の料理本を出版し、日本料理店のアドバイザーや料理教室の開催、ウェブメディア「MASAの料理ABC」の運営を通じて、台湾で「MASA」ブランドを確立し、「日本人イケメンシェフ」の地位を不動のものにしている。

料理に国境なし。その土地の風土に合わせて現地化されるもの

話は変わるが、台湾は歴史的背景も手伝って、日本料理は幅広く受け入れられている。ちまたの日本料理店の数も非常に多い。しかしながら、その多くは台湾式の日本料理と呼ばれるもので、味付けや盛り付けも、本場の日本のものとは異なる場合もある。そのことに話を向けると、山下からこんな答えが返ってきた。

「そもそも料理には国境がありません。自分自身も元はフランス料理を作る日本人ですし、自分の作るフランス料理には当然ながら和の要素が入ります。伝統は大切ですが、その国の土壌で独自に育まれるものがあっても良いのです」

例えば日本の「洋食」はその典型で、フレンチやイタリアンをベースにしつつも、繰り返し改良され、継承され、既に日本の食文化の立派な一つのジャンルになっている。したがって、大判焼きに切り干し大根を詰めたり、たこ焼きにわさびソースを塗ったりする台湾スタイルも大いにありなのだ。食文化は常にお互いに影響を与え合い、混成し、その土地の風土に合わせて現地化していく。

MASA(日日幸福出版社)

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シンガーソングライター、俳優、ライター。仙台市生まれ。2007年からの3年半、財団法人交流協会(現・公益財団法人日本台湾交流協会)台北事務所に文化室長として赴任。日本に帰国後、東日本大震災の復興支援のボランティアに1年半従事。2012年より台湾に移住。日台混成バンド「八得力(Battery)」を結成し、台湾各地での演奏活動の傍ら、映画、ゲーム、CM等にも楽曲を提供。著書に『約定之地—24位在台灣扎根的日本人(約束の地—24名の台湾で根を下ろした日本人)』(2021年、時報出版)。俳優として台湾の映画、TVドラマ、舞台、CMにも多数出演しているほか、2022年7月より台湾国際放送のラジオ番組『とっても台湾』のパーソナリティにも就任。

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