日本人新郎が体験した台湾のびっくり結婚顛末(てんまつ)記・準備編

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大洞 敦史 【Profile】

「提親」(新婦家族へのあいさつ)で「聘金」(結納金)が決まる

プロポーズが成就したら、そこから結婚式に至るまでの間には「提親」「看日子」「訂婚」「拍婚紗」「發喜帖・喜餅」という五つの大きなステップがある。ここで紹介するのは妻の両親から教えてもらった台湾南部の代表的な流儀であり、地域やエスニシティ(客家や台湾先住民など)や宗教の別により異なる流儀が存在する。

自ら作成した「喜帖」(提供:大洞敦史)

「提親」は新郎の家族が新婦の家庭へあいさつに伺うことだ。以後の段取りや金銭的な面もこの時決められるので、肝心要の部分である。話し合いの中で最も緊張が走るのが、新郎側から新婦の両親に渡される「聘金」と呼ばれる結納金の額を決める時だ。「大聘」と「小聘」に分かれており、小聘は「尿布錢」(おむつ代)とも呼ばれ、両親の養育の恩に感謝する気持ちが込められている。

金額は新婦の両親の裁量に委ねられるが、相場は大聘が36万元(1元3.7円)、小聘が12万元程度。結納金が100万円程度で、場合によっては半分ほどが結納返しとして戻ってくる日本と、物価差も含めて比較すると、かなりの負担といえる。もし新婦の家族が新郎を気に入っていれば、大聘を辞退することもあるが、逆に不満がある場合は、法外な価格を提示することで破談を狙ったりもする。何百万元もの聘金を要求され、それでも結婚した夫婦が、分割払いで何年間も払い続けるというケースも時としてある。

占い師に日取りを決めてもらう「看日子」

「看日子」は算命仙仔と呼ばれる占い師に、結婚式を挙げるのにふさわしい日取りを選んでもらうことだ。算命仙仔は新郎新婦の名前と生年月日および誕生時刻を元にそれを算出する。もし漢字圏以外の国の人だったら?とか、時差がある場合、どちらの時刻を基準にするのか?などの疑問は残るが、ともかく挙式は2016年4月3日と決められた。おまけに役所に婚姻届を出す時刻まで指定されていたのだが、順番を待っているところで忘れ物に気付き、急いで家まで取りに戻る羽目になった。幸い滑り込みで間に合った。

時期の良しあしについていえば、日本では欧米に倣ってジューンブライドといって6月に結婚するカップルが多いが、台湾では「有錢沒錢,娶個老婆好過年」(お金があってもなくても、妻を娶(めと)ればいい年が越せる)という俗語があり、旧正月が近くなると結婚式が増える。逆にあの世から霊が戻ってくるとされる旧暦7月に結婚する人はまずいない。ただしキリスト教徒は例外である。

「訂婚」は日本でいう結納である。新郎とその家族が仲人を伴って新婦の家を訪れ、聘金の受け渡しや指輪の交換などを行う。一連の作法が非常に細かい部分まで定められているのだが、僕の場合は国際結婚ということで訂婚自体を省略させてもらった。

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1984年東京生まれ、明治大学理工学研究科修士課程修了。2012年台湾台南市へ移住、そば店「洞蕎麦」を5年間経営。現在「鶴恩翻訳社」代表。著書『台湾環島南風のスケッチ』『遊步台南』、共著『旅する台湾 屏東』、翻訳書『フォルモサに吹く風』『君の心に刻んだ名前』『台湾和製マジョリカタイルの記憶』等。

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